歯並びを治せないほどに、アゴの退縮がすすんでいる

【第131回ブログ】は、不正咬合と歯周病の関連性についてです。矯正治療を制限してしまうほどに、アゴの歯槽骨が薄くなっています。特に、前歯の挺出(引き出すこと)をともなうオープンバイト(開咬)では、歯周骨の充填を必要とするケースが増えています。

【アゴの垂直成長がもたらす歯周問題】

下顎の前歯は、アゴ骨のなかに植立しています。前後にそれぞれ約1ミリの厚さの骨で覆われているのが正常です。これまで測ることが難しかったアゴ骨の厚さは、CBCT(歯科用 CT)を用いて簡単に測ることができるようになりました。

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下向きに成長した下顎をもつ人は、アゴが細く、不揃いの歯並びになることが多いのです。しかし同時に、アゴ骨が薄いため、歯並びを治すときに歯周問題を抱えるケースがあります。

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写真をご覧ください。それぞれ違う人の下顎と前歯ですが、下顎が下に伸びるほど、歯を支える骨が薄くなってしまう傾向があります。歯の前後に1ミリの壁がない場合は、歯並びを治す前に外科的に骨を充填する必要がありそうです。

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【オープンバイトは歯周問題になりやすい】

女性の約1割にみられるという開咬、上下の前歯が開いていて、噛み合わせることができない不正咬合です。原因はいろいろで、そのため明確な治療法が定まっていません。治療しても後戻りする再発率は約4割と言われています。

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子供の頃なら治せますが、大人になってからでは難しいのです。そのわけは、開咬の主な原因が、アゴ骨が成長するときの形態の異常にあるからです。成長途上なら変えられるが、成長が終わってからでは難しい。

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開咬の治療は一般的に、奥歯を圧下(アゴ骨の中に押し込む)と、前歯を挺出(アゴ骨から引き出す)を伴います。このときに問題となるのが、前回お伝えしたように、薄いアゴ骨から前歯を引き出すため、歯周問題を生じてしまうことです。

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開咬の原因のひとつは、下アゴの下向き成長にあるので、アゴ骨が薄くなる傾向にあります。6〜8歳からの顎顔面成長期に、口呼吸を止めて鼻で呼吸し、一定時間ガムを噛むなどして、咬筋をトレーニングすることにより、アゴの前方水平方向への成長をはかりましょう。

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【これからのオープンバイトと歯周問題】

ご指摘のように、オープンバイトの主な原因は、タング・スラスト(舌突出癖)です。舌が下がっていて、上下の歯の間に舌をはさんだり、上下の前歯を舌で押し出すために、歯が開いて噛み合わなくなる状態です。

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タング・スラストによるオープンバイトは、お口をいつも開いている口呼吸が原因です。外からタガをはめる唇圧が無いために、内側からの舌圧でオケが広がってしまう感じです。

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さらに今後の問題となりそうなのが、下顎の後退と垂直成長に伴う、オープンバイトと歯周問題です。もともとあまり噛まないために、十分に成長できなかったアゴは、歯槽骨が薄い傾向にあります。

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薄い歯槽骨に植立した前歯を、顎間ゴムで引き出したり、トルクを加えて傾けたりすると、ますます歯根が露出してしまいます。最終的には骨充填しなければ、歯並びを治すことができません。

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写真はイメージなので、ひとつの症例を示すものではありません。歯並びを治療して、生涯にわたり長く維持するためにも、しっかりとした土台となる、厚い歯槽骨を育てることが大切ですね。

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【マリアンナ・エバンス先生】

矯正歯科専門医でありながら、歯周専門医でもある、米国NJ州のマリアンナ・エバンス先生は、ダブルライセンシーの持ち主です。従って、先生の研究と治療の特徴は、矯正治療にともなう歯周疾患の修復と、アゴ骨が薄いために治療が難しいと思われる患者さんの矯正治療です。

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そのような立場から、先生が警鐘を鳴らすのは、年々増加傾向にあるアゴの退縮と崩落です。上顎が水平前方に成長せず、それに伴って下顎が下向き後方に成長します。

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その結果、前歯の不揃いやオープンバイトになりますが、土台のアゴ骨が十分で無いため、歯根が露出するような歯周問題を起こしていると言います。

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エバンス先生の発表の概要は以下の通りです。

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近年、歯槽骨の欠如と歯周退縮は、不正咬合と同様に、流行病と言われるほどに頻発しています。何が原因しているのでしょうか? 病的な呼吸、顎顔面骨の形成不全、そして歯槽骨の欠如はリンクしているのでしょうか?

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いくつかのエビデンス(科学的根拠)は、成長段階における病態が、年齢とともに悪化することを示しています。不正咬合と歯周問題、および呼吸障害の関連性を論じ、それらの治療と予防についてご紹介します。

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