舌をジャマしない機能矯正装置を見直そう

【第143回ブログ】は機能矯正装置のご紹介です。2018年12月の Facebook の記事を転載しています。内側から歯列を広げる舌の働きを、最大限に活用する機能矯正装置には、ALF装置やクロザート装置があります。

【ライトワイヤー・ファンクショナル装置という選択肢】

舌をジャマしない、舌の動きを積極的に利用する、というのがALF 装置 ( Advanced Lightwire Functional Appliance ) の特徴です。装置自体のバネ性でアゴを拡大しますが、主体的に歯列とアゴを成長させるのは、内側からの舌の圧力であると考えています。

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0.6ミリほどの太さのバネ線で作られているので、舌の動きをジャマしません。会話することや飲み込むときに、舌圧が歯列の内側に加わり、アゴの横と前方への成長を促進します。取り外しのできる上顎下顎の機能矯正装置です。

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1980年代にダリク・ノードストローム先生が考案されました。標準的な治療期間は6〜18ヶ月です。オメガループの細かい調整を伴うので、通院回数が多く面倒かもしれません。ALF装置を矯正治療に採用しているドクターグループのサイトはこちらです。

https://alftherapy.com

【そしゃく・会話などの口腔筋機能と調和する ALF装置】

5歳頃の乳歯列期に多く見られる反対咬合、臼歯部ではクロスバイト(交叉咬合)と呼ばれています。上顎・下顎の成長のアンバランスによって、下顎の歯列が、上顎歯列の外側に出てしまっている問題です。

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反対咬合やクロスバイトを放っておくと、後戻りの効かない受け口(クラス3)になったり、片噛みからくる顔面非対称・顎変形症・顎関節症につながります。

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5〜7歳の乳歯列または混合歯列前期に用いられる ALF(アドバンスト・ライトワイヤ・ファンクショナル)装置は、自律的な顎顔面の成長をジャマしない矯正装置として、根強い人気があります。

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日本ではあまり見かけませんが、米国の機能矯正医にはマストのアイテムです。ALF装置を推奨する、ジェームス・ブロンソン先生の症例報告を以下のPDFからご覧ください。

https://www.bronsonfamilydentistry.com/…/ALF%20Functional%2…

【クロザート装置がここ10年で急増した理由とは】

それは早期治療が増えたからです。思春期の12歳ころから治療を開始すると、乱杭歯のため歯を並べるスペースが無いということが多々あります。小臼歯4本を抜いて治療するというのが常識だったのは、過去の話です。

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ここ10〜15年の間に、歯を抜かない治療に急激に変化しました。私の記憶では、20年前は抜歯矯正の割合は6割であったのに対して、今では3割です。これはアメリカのデータです。日本ではまだ5〜6割が抜歯治療なので、早期治療への取り組みが遅れています。

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前回ご紹介した ALF装置の A : Advanced の意味がわからないと米国の専門医も言っていました。おそらく、前方への成長を誘導できるライトワイヤーという意味ではないでしょうか? というのも ALFの元祖である、クロザート装置 ( Crozat Appliance ) はもっぱら臼歯部の拡大に作用し、前歯部を押し出す働きを欠いていたからです。

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クロザート装置は、内側からの弱い力でアゴを広げる機能矯正装置です。取り外しができて、見えない装置というのも、今のクリアアライナーの特長に引き継がれています。床矯正装置やマウスピース型の矯正装置のように厚ぼったくないので、舌の動きをジャマしません。

【歴史を耐え抜いてきたクロザート装置】

上顎を拡げるならば、ねじ式の拡大装置(急速拡大装置:Rapid Palatal Expander ) が確実です。写真のクロザート装置のように細かい調整を必要としません。上の奥歯(臼歯部)が、下の奥歯の内側にあるクロスバイトならば、ねじ式の拡大装置がとても効果的です。

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しかし、ねじ式は必要以上に拡げてしまう心配があります。また、一般的に下顎に使えません。ねじ式と違ってクロザート装置は、弱い力でゆっくりと、お子さんの顎の発育スピードに沿って成長させることができます。一気にジャンプできないが、自然に誘導する機能矯正装置です。

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クロザート装置の歴史はほぼ100年になります。ワイヤー・ブラケットの固定式装置との市場競争に敗れ、全く見向きもされませんでした。しかし、大戦後の欧州の物資困窮の時代に、線細工だけで歯並びを治せることから、再び脚光を浴びた時代もありました。

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今ではその役目を終え、ALF装置へバトンタッチしています。しかしながら、クロザート装置の開発思想である、舌の働きをジャマしないで、お子さん本来の顎の成長力を引き出すという考え方は、形を変えて様々な機能矯正装置に受け継がれています。

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【下アゴで受けない、グラモンス・フェイスマスクのご紹介です】

ほとんどのフェイスマスクは、おでことアゴにパッドを当てて、それらをつなぐ1本の弓状の棒でできています。上顎犬歯あたりにフックをつけ、輪ゴムで引っ張ります。

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これにより、下アゴに対して成長が弱い、もしくは成長が遅れている上顎の、前方成長を促進することができます。もはや、お子さんの早期治療には必須のアイテムになりました。

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併せてエキスパンダーにより、上顎の幅方向への拡大も行います。上顎の成長が弱いために生じる、受け口(クラス3)に適した装置です。年齢は大人の前歯が生えた6〜7歳頃から使い始めます。

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写真の装置は下アゴに当てていないので、下アゴが垂直成長しているケースに適しています。パッドで下アゴを押すと、顎関節を中心にして、下アゴがさらに下がり、鼻から下が長い顔になってしまうからです。

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この装置は、米国ワシントン州の矯正医、デュエン・グラモンス先生が考案されました。マイナーな装置ですが、下アゴの垂直成長が増えつつあるなかで、再評価されつつあります。

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デュエン・グラモンス先生のフェイスマスク・セラピーは Vimeo 動画からご覧いただけます。

https://www.drgrummons.com/…/grummons-protraction-facemask…/

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