下アゴの成長を促す顎間装置について

【第147回ブログ】は、上下のアゴの関係を改善する顎間装置5種類を紹介しています。この記事は、2019年1月中旬に Facebookに投稿した内容を転載しています。

【噛み込む力で、下顎を前に押し出すバイトジャンパー】

上の歯が下の歯に対して5ミリ以上、大きく飛び出ているような出っ歯ぎみのときに、噛み込む力を利用して、下顎を前方に押し出します。この装置を、バイト・ジャンピング・アプライアンス ( Bite Jumping Appliance : BJA ) と呼びます。

・・・

上下2個に分かれています。上のプレートに、ソリのような2本のバーが付いています。下のプレートには、ソリが滑る斜面があります。噛み込むと、上のバーが下の斜面にあたり、下顎を前に押し出します。

・・・

食事時や運動時以外の、1日12時間以上の装着が必要です。バーが邪魔になって会話がしづらいかもしれません。成長期のお子さんに用いる装置なので、8歳から12歳くらいが適齢期です。

・・・

【一世風靡したハーブスト・アプライアンス】

日本ではあまり使われなかった、ハーブスト・アプライアンスも バイトジャンパーのひとつです。日本人は下顎が前にでる受け口が多いためか、この装置のニーズが少なかったのかもしれません。

・・・

左右のつっかい棒が、下顎を前に押し出す感じです。棒の動きが滑らかなので、お口を開閉しても不快感がありません。お口を閉じると、下顎の後退が制止される感じです。

・・・

下顎を押し出す力を、上の奥歯で受けるので、奥歯がさらに奥に動く心配があります。また、押された下顎が前だけでなく、下方にも伸びてしまう問題があります。

・・・

この装置は、上の歯が出っ歯ぎみのお子さんの、下顎の成長を促進する目的で使われます。1年間ほど装着し、取り外すことはできません。欧米で一時期流行った装置ですが、デメリットの割に効果が薄いという意見もあり、今は主流ではありません。

・・・

【ジャスパー・ジャンパーについて】

下アゴを成長させるために、どのような方法と装置を用いてきたのかについて取り上げています。出っ歯(上顎前突)を治療する過程で、下アゴとの前後関係を改善することが多いです。

・・・

上アゴを広げる一方で、下アゴを前に成長させる必要があります。このときに用いるのが、ジャンパーです。ジャンパーは「飛び越える」の意味ですが、この場合は、上アゴから下アゴに「またがっている」の意味です。

・・・

今回ご紹介するジャンパーは、ジャスパー・ジャンパー ( Jasper Jumper ) です。名前のとおり、ジャスパー先生が作りました。このジャンパーは前回のハーブストと違い、斜めに押す力が発生しません。

・・・

そのため、下アゴを下方(垂直方向)に成長させることがありません。柔らかいゴムまたはコイルバネでできています。取り付け部分がフレキシブルなので、前後方向にのみ力が働きます。

・・・

【 MARA ゴツゴツしていますが信頼性が高いです】

これがお口の中に入ったら、さぞかし痛いだろうなと思ってしまいます。事実痛いので、ワックスを使うことを勧めています。MARA( Mandibular Anterior Repositioning Appliance : 下顎前方転位装置 )は、シンプルで信頼性が高いと絶賛されています。

・・・

上の前歯が下の前歯より、大きく前にせり出している出っ歯ぎみ(上顎前突:クラス2)の患者さんは、下顎の成長が弱く、特に上下大臼歯の位置関係がずれている場合が多いのです。

・・・

下の大臼歯は上の大臼歯より、半分、前にいなければなりません。出っ歯のケースでは、半分、後ろになっていることが多いのです。従って、下の顎をどっこいしょと、前に送り出す必要があります。

・・・

MARA はお口を閉じたときに、強制的に下顎を前に出すようにします。上のトライアングルに対して、下のグリップを前にしないと、お口を閉じられません。最初は大変でも、2週間もすれば慣れます。1年から1年半装着します。

・・・

【1石5鳥のカリエール・モーション】

ブログでおなじみのケビン・オブライエン先生が、「いかなる機能矯正装置も、下アゴを成長促進できるなんて、幻想に過ぎない」と言い切っています。えっ、何ですって? 下アゴの成長を促す機能矯正装置をしばらく取り上げてきたので、冷や水を浴びた気持ちです。

・・・

ケビン先生の真意を、後日明らかにしたいと思います。今回はその機能矯正装置のニューヒーロー、カリエール・モーションです。治療に使われだしてから、10年ほど経つでしょうか。最近、その治療効果が大きな話題となっています。単純な一本の棒に、歯を抜かずに治療できる働きがあったとは。

・・・

カリエール・モーションには、セトリン・グリーンフィールド先生たちが提唱した非抜歯テクニックが具現化されています。上顎の大臼歯を外側に回転させ、同時に犬歯間の距離を広げます。犬歯が広がれば、前突ぎみの上の前歯が後退し、乱杭歯が解消されます。

・・・

上下のアゴの間に掛けた輪ゴムが、上の大臼歯を後ろに、下の大臼歯を前に引っ張り、上下関係が改善されます。また、上の大臼歯が外側に回転すれば、それだけで数ミリの隙間が生まれます。

・・・

1週間ほどお休みをいただきます。出張のためです。

・・・

コメントをどうぞ


友だち追加