鼻つまりが口呼吸を招くのか、口呼吸が鼻をつまらせるのか

【第151回ブログ】は、口呼吸と鼻つまりの関係です。鼻がつまるので口呼吸をするのは理解できます。しかし、口呼吸が鼻つまりの原因なのでしょうか?答えはイエスです。口呼吸のため横に広がらない上顎は、狭くなります。狭い上顎は、口蓋の上に載る鼻腔も狭くなります。狭い鼻腔は鼻つまりを生じやすいです。この記事は、2019年3月下旬の Facebook 記事から転載しています。

【花粉症で実感する鼻つまりの重大性】

ようやくスギ花粉のピークが過ぎ、ガマンの季節が終わろうとしています。花粉症の症状で一般的なのが、鼻つまり(鼻閉)ですね。頭がボーッとして集中力がなく、なんともやりきれません。

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鼻が詰まるので、お口で呼吸せざるを得ません。口呼吸で実感するのは、呼吸が浅くなることです。空気の流れが速くなり、ハアハアと呼吸回数ばかりが増えます。

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呼吸が浅いので、自律的に呼吸をコントロールする横隔膜が、十分に機能しません。呼吸系の筋肉が弱くなります。

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子供さんが5〜6歳のころの、鼻つまりを起こし、お口で呼吸している状態は、ズーッと花粉症が続いているようなものです。

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成長期の口呼吸は、上顎を狭くし、歯並びを悪くします。上の奥歯が、下の奥歯の内側に入るようなクロスバイトを助長します。さらに、上顎が狭いため舌スペースを確保できず、呼吸気道を狭めます。

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【鼻の中・鼻腔構造を知る】

メンソールを嗅ぐと頭がスッキリして鼻の通りがよくなります。北国の冷たい外気を鼻から吸うと、頭がずきんと痛くなります。鼻の中(鼻腔)はどのようになっているのでしょうか? 神田淡路町の神尾記念病院さんの解説記事を参照させていただきました。

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鼻は鼻腔と副鼻腔とから成り立っています。頭蓋骨の中にはたくさんの空洞があり、鼻の周囲に集まっているものを副鼻腔といいます。副鼻腔は上顎洞、篩骨洞(しこつどう)、前頭洞、蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)の4つに分かれ、脳や眼と隣接し、また各洞は鼻腔と連絡しています。

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鼻腔は鼻中隔(びちゅうかく)で左右に仕切られ、外側の壁から下甲介、中甲介、上甲介と呼ばれる粘膜に被われたヒダが出て、その隙間が空気の通り道となっています。鼻腔、副鼻腔の内面はごく小さな毛(せん毛)の生えた粘膜で被われ、分泌物や吸い込まれたゴミなどを排泄しています。

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鼻の役目は、①吸入した空気を温める ②吸入したホコリ・ゴミを湿った粘膜に付着させて除去する ③空気に適度の湿り気を与える ④空気とともに運ばれた匂いを感じる などの機能を持っています。

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【鼻の通りを評価する】

全ての動物は例外なく鼻で呼吸しています。犬が舌を出してハアハアするのは体温調節のためです。呼吸のためではありません。人間も生まれつき鼻で呼吸する動物です。しかし何故か、一部の人間はお口で呼吸しています。

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鼻つまりが原因で、口呼吸せざるを得ないのかもしれません。鼻つまりは自分で分かっていても、他人に説明するのは難しいです。そこで、鼻の通りの良し悪しを客観的に判断する検査法があります。耳鼻咽喉科でご経験されているかもしれません。

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片方の鼻から、思いっきり息を吐き出すときの、呼気圧力を測定します。鼻腔通気度検査(リノマノメトリー: Rhinomanometry )と言います。左右それぞれと両方の3回測定し、鼻つまり(鼻閉)の状態を見ます。

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【狭いアゴの小さなスマイル】

一見良さそうで、今どきのスマイルでないのが、狭いアゴの小さな笑顔です。歯並びは良くても、スマイルは不完全です。口角に暗い部分があり、歯並びと唇の調和がとれていません。

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この暗い部分を歯科では、「ネガティブ・スペース」と呼んでいます。「残念なスキマ」という意味です。上顎歯列の歯肉ラインが、上唇のラインと一致している。前歯の先端と、下唇のラインが一致している。そして、口角に暗い部分が無いのが理想です。

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顔立ちや唇と調和させたうえで、歯列を拡大することは、ビッグスマイルを獲得するために、とても重要なプロセスです。大人になってからアゴを広げることは、可能ですが制約があります。

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できれば、6歳からの成長期にアゴを広げて、舌の安定をはかることが理想です。ビッグスマイルは舌が安定するので、治療後の後戻りも少ないです。ビッグスマイルは生涯を通じて、若々しいというメリットもあります。老け顔になりにくいのです。

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【街の写真屋さんが知っているスマイルの品質】

街の写真屋さんが認める、アーティスティックなスマイルを積み重ねてきたのは、米国アリゾナ州メサ市の矯正専門医、スチュワート・フロスト先生です。アメリカでは誰もが、歯を見せて記念写真に写るので、スマイルの質の違いを、街の写真屋さんが実感しています。

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できるだけ歯を抜かない、外科手術によらずにガミースマイルと受け口を治療する、拡大装置を使わずに上顎を広げる、顔や唇と歯列を調和させる。これらのことができるので、大人の患者さんが5割を占めるそうです。

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フロスト先生は、顎関節痛や偏頭痛に悩む患者さんが、歯科矯正に原因があると考えていることに、解決の糸口を見つけました。フェイスボウを使わない、アゴを後退させない、顎関節を圧迫しない治療を目指した結果であるとのことです。

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さらに、子供たちの呼吸気道を広げる、舌のスペースを確保する、口腔機能を確かなものにする。これほどの間口の広さにもかかわらず、生え変わり時期の子供さんの治療の割合は、患者総数の15%ほどにとどまるそうです。

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これだけのことを一人の歯科矯正医が矛盾なく行うことは、まさしく理想的です。年間新患数が500人というのも納得できます。フロスト先生は、6月に日本での初講演を予定しています。

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フロスト先生のウェブサイトはこちらから。

https://www.frostortho.com

【上アゴを広げることが、肺活量を増すことの証明】

2階建ての家をイメージしたとき、1階のお口の天井と、2階のお鼻の床は同じ骨でできています。そのため、上アゴを広げると、鼻腔が広がります。狭い上アゴの問題は歯並びだけでなく、多くの場合、呼吸しづらい問題も抱えています。

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平均年齢17歳の、上アゴが狭く、日常的に口呼吸している20人の患者さんがいました。拡大装置を用いて、上アゴを強制的に拡大したところ、呼吸機能が大幅に改善したとの報告があります。

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上アゴ(口蓋)を広げると、鼻腔も広がり、口呼吸から鼻呼吸に変化しました。さらに注目すべきは、呼吸気道も広がり、肺活量が増したとのことです。口呼吸がいかに体に悪いかを実感します。

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この報告はアゴの成長が終わった17歳の男女を対象としています。6歳からの成長期のお子さんの、上アゴの成長不足を早めに発見して、左右および前方への拡大が、お子さんの健全な成長に欠かせないことを示しています。

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上顎拡大による呼吸機能の改善と肺活量の変化を示す論文はこちらから。

https://www.angle.org/doi/pdf/10.2319/070518-504.1

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