アメリカの歯科矯正事情

【第4回】アメリカの歯科矯正事情

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米国の保健医療システム

2014年データでは、18歳以上の大人(高齢者も含む)の87.1%が歯科を含む何らかの医療保険に加入しています。18歳以上の大人が加入する歯科も含む保険基金(ファンド)は、次の4つに分類されます。会社が従業員のために加入する医療保険の加入者43.5%、自分で保険料を払う民間の医療保険の加入者20.6%、低所得者層のためのメディケイド (Medicaid) 対象者8.6%、65歳以上の高齢者のためのメディケア (Medicare) 対象者が7%です。それでも保険に未加入の人は15%ほどいます。メディケアとメディケイドは米国連邦政府が管理する医療保険ですが、それでも貧困層の40%しかカバーできていない現実があります。

メディケイドについて

これは低所得者層にむけた国の社会福祉制度のひとつです。国の政策ですが、州によって適用が異なります。

●州は独自に適用基準を定める

●州は独自に支援の形態、金額、期間、および範囲を定める

●州が負担する支払い割合を決める

●州が管理事務を行なう

メディケイドの支払いは請求にもとづき州政府から直接、医療機関に支払われます。その後に支払い額の一部を、国が補填します。国の負担割合は、州の平均世帯年収に応じて、50〜83%の範囲で決められます。歯科医療に関して、メディケイドによる歯科矯正治療は、口腔衛生と口腔機能の観点から必要度の高い子どもに対してのみ行なわれます。見た目(審美)の改善には原則適用されません。

子ども健康保険プログラム (Children’s Health Insurance Program : CHIP) を充実するために、2009年から予算が大幅に増額されました。オバマ大統領のお陰です。19歳までの子どもの医療費を手厚くするもので、高額所得者層には当てはまりません。CHIPは連邦法ですが、州政府が管轄しています。このプログラムは国と州の両者の予算でまかなわれています。全米46州では、連邦貧困レベル(2011年の4人家族で245万円)の2倍の世帯収入(490万円)までメディケイドでカバーされています。(ちなみに日本でも世帯収入に応じて、中高生までの子どもの医療費を全額助成している自治体が多いです。しかし、矯正治療は含まれません。)州によっては、3倍の世帯収入(740万円)まで助成しています。2014年において、810万人の子供たちがメディケイドの恩恵を受けています。

メディケアについて

これも国の健康保険プログラムのひとつです。高齢者および障害者を対象とした医療を提供しています。該当者は65歳以上か、65歳以下の障害者、年齢にかかわらず人工透析を受けている方です。メディケアはほとんどの歯科医療をカバーしていません。しかし、メディケア提携病院においては、病院内の治療であれば歯科もカバーされます。

民間の医療保険について

米国においては、会社(雇用者)側が従業員のために医療保険に加入することがあります。しかしながら、全ての医療保険が歯科矯正をカバーしているわけではありません。被雇用者の約4割がこの会社が提供する保険に加入しています。2014年から法律により、会社であれ個人であれ、医療保険に加入することが義務化されたため、加入率は急速に高まるものと思われます。

Affordable Care Act(医療費負担適正化法)が2010年に成立し、これまで保険に入っていなかった全ての人に、医療保険に加入しなさいとなりました。民間の保険会社には廉価な保険を提供しなさいとなりました。いくつかの医療保険は歯科矯正もプランの中に含んでますが、多くは18歳以下の子どもに限定しています。大人向けの矯正治療もカバーする医療保険には、例えば、DeltaCare USA PAA48があり、保険会社と契約した矯正歯科医院で治療を受けるならば、28万円($2,500)まで支払ってくれます。それ以外の多くの医療保険は生涯一度限りで11〜22万円($1,000〜2,000)を支払ってくれます。

更に米国には、歯科貯金プラン (Dental Saving Plan) というものがあり、一般歯科医のネットワークによって支えられ、多くの州で人気があり、大人の矯正治療費の割引にも応じています。例えば、Carington Care 500 Planは、成人矯正をおこなうGP矯正治療費の20%オフに応じています。このプログラムへの加入費は11,500円($105)かかります。

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