GPと専門医の違い(オーストラリア矯正事情)
Part4)GPと専門医の違い(オーストラリア矯正事情)
4回目は一般歯科医(GP)が行なう矯正治療と、矯正専門医が行なう矯正治療の違いについて報告します。その前に、歯科医と矯正歯科医の立場の違いについて説明しなければなりません。オーストラリアで歯科医になるためには、歯科大学で4年間勉強した後 ⇒ 1年間を研修医として公立病院に勤務し ⇒ 更に2年間を民間医院または公立病院で勤務した後、オーストラリア歯科評議会Dental Board of Australia (DBA)によって歯科医師免許が与えられます。
矯正歯科医になるためには、上記に加え、更に3年間の Post-Graduate Course (研究課程)を経なければなりません。合計10年の歳月を経て、DBAによりスペシャリストとしての歯科矯正医の資格が与えられます。オーストラリアには9つの歯科大学があり、このうち矯正歯科の研究課程があるのは5つです。
ちなみに日本の場合は、歯科大学にて6年間勉学し ⇒ 1年間の研修を経て、歯科医師免許が得られ ⇒ 更に2年間の矯正医局での研究課程を経て ⇒ それから3年間の実践的な臨床経験を積み、その後に日本矯正歯科学会(JOS)の認定医となることができます。ここまで計12年の年月をかけています。
矯正歯科医のほとんどのドクターは、オーストラリア矯正歯科医会(ASO)に加入しています。矯正歯科医 “Orthodontist” と呼べるのは、Australian Health Practitioner Regulatory Agency (AHPRA) 傘下の歯科評議会(DBA)によって認められた専門医に限られます。
一般歯科医による矯正治療は可能ですが、次の条件を満たさなければなりません。すなわち、歯科評議会が定める以下の研修コースのうちいずれかを履修し、一定のレベルに達していることが求められます。研修コースは現在5つほど有り、通常1〜2年の期間を要するものです。具体的には、
① シドニー大学の13ヶ月コース
② Progressive Orthodontics & Dentistry course
③ Dr.Mahoney の矯正レジデンシー・ミニコース2年間
④ インビザライン・コース
⑤ Postgraduate School of Dentistry http://pgdentalschool.edu.au/
⑤は2015年設立の Webinar を用いた通信教育の大学院です。ASOは決して賛同していません。
GPによる矯正治療の規模は、13,500名の歯科医のうち約2,000名が、年間10〜30名の患者さんを治療しているものと思われます。専門医による治療が11万人、GPが4万人、合計15万人の年間新患数というのがオーストラリアの矯正の規模でしょう。日本の人口の5分の1で15万人規模ですから、日本の年間新患数25万人(推定)に比べて、とても高い普及率と言わざるをえません。
ご存知のように、日本においては歯科医の免許がおりれば、【矯正歯科】という看板を掲げて開業できます。このため、患者さんからみれば、専門医と全く経験の無い歯科医が同じに見えてしまうため、さまざまな問題を生じています。次回はオーストラリアの歯科医院の広告規制について報告します。