先進歯科学会のインタビュー(3/3)
第167回動画は「先進歯科学会のインタビュー」全3回のうちの、最後の (3/3) です。Dental Evolution という 5,000人規模のスタディグループがあり、ドレク・マホニー先生がインタビューを受けました。3回目は変化する歯科業界と、特に変貌が激しい歯科矯正分野の未来について語っています。
今はまだ、半分の症例にしか対応できていないアライナー矯正ですが、10年後には90%の症例に対応できるかもしれません。また、アライナーの流通形態も、ホワイトニングのように歯科医院でしか使えなかったものが、薬局で買えるようになるかもしれません。スマイル・ダイレクト・クラブのような、オーバー・ザ・カウンターになってしまえば、治療費は20万円で済みそうです。当然、これには治療上のリスクを伴います。
矯正歯科医は3つのグループに区別されるだろうと言います。筋機能療法と咬合誘導を重視する小児矯正医、外科矯正を含めどのような難症例にも対応できる狭い意味での矯正専門医、そして、クリアアライナーを処方する一般矯正医です。
P:それでは 将来の話に移りましょう
歯科分野の状況が 大きく変化しています
特に今は 技術が進化しているので
歯科分野の料金が下がっています
患者さんのことや 収益面も含めて
お話しくださると 歯科医の展望が開けます
特に 歯科矯正において
劇的な変化が起こっていますね
歯科矯正はどの方向に向かうと思いますか?
これからの10年を例に挙げてください
M:世界規模で? それとも豪州で?
P:世界で起きることは豪州でも起きるでしょう
少し遅れるでしょうが必ず起きます
スマイルダイレクトクラブの例をお願いします
米国ではかなり長期に 大ヒットしていますね
M:豪州でも大ヒットしていますよ
P:そのやり方と フォローアップには
とても興味があります
何人かの歯科医が 自分のお子さんで
全てのプログラムとフォローアップを試しました
米国から電話でフォローアップするんです
患者さんにも電話をかけてきます
将来のことについて教えてください
スマイルクラブや インビザラインなどの
クリアアライナー市場について
院内で使えるソフトウェアも出てきています
独自のアライナーを院内で製作できるため
矯正歯科医の仕事はどうなるのでしょうか?
M:毎年 2つの大きな学会に出席しています
これまで20年間 一度も欠かさずです
AAO(米国矯正歯科医会)は最大規模の学会です
それと欧州の学会もあります
年を追うごとに どの会社も
独自のアライナーを品揃えしてきています
どのブースもI T製品を展示しています
3Dプリンターの価格が破壊されました
インビザラインや クリアコレクトの
会社だけが独占していた初期のソフトウェアが
今では市販されています
コストをいくら掛けるかによります
私が思う10年後の未来は
患者さんが来院して椅子に座ると
3Dの顔写真と 3DのX線写真を撮って
直接そこからバーチャル模型を作り
ラボ(技工所)で歯を並びかえ
数日後にアライナーが送られてきます
歯列矯正だけを行いたいなら できますが
アライナーは子供の呼吸気道を治しません
アライナーは子供の指しゃぶりや
クラス3級の遺伝的成長を阻止できません
そのため他の矯正手段が必要になります
経営的観点からアライン・テクノロジー社の
収益を見てみると
昨年度は 主な競合他社3社の利益を
合わせた利益の 2倍でした
それは何を意味するでしょうか?
アライナーの会社は生き続けるでしょう
私が矯正を指導した友人は
アライナー矯正の割合を10 %から
90%にまで増やしました
お二人の先生が今回の講演に来られます
ディエゴ先生と イバン先生です
彼らの治療は100%クリアアライナーです
経験が豊富で全ての症例に対応しています
彼らがアライナー矯正を好む理由は
ワイヤーが飛び出したり
ブラケットが取れてしまう
心配が要らないからです
治療が上手くいかないのは 患者さんが
アライナーを使っていないからです
矯正専門医として従来の矯正法を用いると
多くのプレッシャーを感じるのと
患者さんの予定外の通院が多くなります
アライナーが歯科矯正の市場を
独占していくのは明らかです
しかし矯正医には3タイプあります
タイプ1は口腔筋機能療法です
クリス・ファレル先生は豪州で
マイオブレースを普及させました
小児でポスチャーが悪く 鼻呼吸できず
タングスラストがあり オトガイ筋が
過剰に発達しているケースに対応しています
2番目は 私の得意分野である
顎顔面整形(フェーズ1)を伴う歯科矯正です
狭い顎を拡大し 早期にクラス2級を治し
フェイスマスクで上顎を前方に出します
成長期の小児でなければできません
コンピューター会社にはできません
3番目の領域は 永久歯に生え変わってから
歯並びを治す従来の矯正歯科です
それはアライナー矯正の領域に入ります
私もその一人かもしれませんでした
10年前に 全ての症例をアライナーで
治せるかと聞かれたら
冗談でしょ! と言ったでしょうが
今は半々です
整形的治療(フェーズ1)を終えた
私の患者さんで まだ歯並びが悪く
仕上げ矯正(フェーズ2)が必要ならば
50%の割合でアライナー治療をします
10年後は90%の割合になっているでしょう
P:それでは従来の矯正法は
歯科業界でどうなると思いますか?
M:それは古いコンピューターに入れる
4.5インチのフロッピーディスクのようなものです
P:将来 需要がなくなるということですか?
アライナーで全て治療できると思いますか?
M:現在は アライナーだけで
全てに対応できませんが 多くを治療できます
アライナー適用以前の治療が大事だと思います
難しいケースの場合は 患者さんに
クリアブラケット数個と
見えない細いワイヤーを付けて
大きく歯を動かしたのちに
アライナー矯正に移ります
この方法なら アライナーで
全てのケースを治療できます
アライナーが適さないケースは
歯の挺出と圧下 重度の捻転です
アライナー適用以前の治療を少し行えば
アライナーで治療を終えられます
両者にとって好都合です
10代の男児で 固定式の矯正装置を付けていて
歯磨きをしない子が多いため
アライナーはその点で素晴らしいです
アライナー治療の将来に期待しましょう
シドニーで有名な矯正の先生は
ほぼアライナーだけで治療しています
素晴らしい治療結果を出しています
これほど多く アライナーで治療するとは
夢にも思わなかったそうです
時代は変わりました
マーク・バン・ウィードルさんをご存じですか?
A Iを駆使して アライナーの進み具合を
遠隔でチェックしています
矯正医が経営しているフランスの会社で
デンタルモニタリングと言います
必要がなければ
患者さんを通院させずに治療できます
医師が離れた場所からモニタリングできます
P:矯正医は患者さんにかける時間を短縮でき
アライナーでより多くのケースを治療できるので
先ほどもお伝えした通り
歯科業界が変わってきています
そのため矯正医と歯科医の役割は
どのように変わっていくのでしょうか?
彼らの専門分野の将来はどうなりますか?
M:インビザラインの会社に聞いて下さい
彼らは 矯正専門医よりも
一般歯科医とより多く提携しています
患者さんがアライナー矯正を受けようと思ったら
グーグルで「インビザライン」や
「歯並び 装置なし」と検索します
一般の人はそこまで深く考えていません
矯正専門医のもとで
アライナー治療を受けるべきか?
一般歯科医のもとで治療を受けるのか?
あるいは 近くの薬局で
スキャンしてもらうか? 選択できます
ショッピングセンターに スキャンできる
ブースがあるので 患者さんは直接行けます
矯正専門医は なぜ一般歯科医がアライナー矯正を
行っているのかと 何年も不満を言っていますが
今では一般歯科医が 多くの人が歯科医を介さずに
治療を受けられる事実に不満を言っています
ホワイトニングと一緒ですね
今では ホワイトニングを自分でできます
従ってクリアアライナーも同じ結果になります
残念ですが 他に手立てがありません
P:時代とともに歯科の状況が変わってきています
現段階では 矯正医だけができる分野と
歯科医ができる分野があります
従来の矯正装置や アライナーにも
それぞれ適した分野があります
皆が市場で各自の役割を担っていますが
技術が発展するにつれ 市場が変わり
結局は 患者さんの利益につながります
今日はお話しできて光栄です
とてもためになりました
最後にお伝えしたいメッセージはありますか?
M:呼吸気道が第一で 歯並びは最後です
P:それではどうもありがとう
それではまたお会いしましょう