アメリカの歯科矯正事情
【第6回】アメリカの歯科矯正事情
チャリティープログラムと財団・基金
子供たちに笑顔を届けようプログラム(GKAS : Give Kids A Smile)は、米国歯科協会(ADA)による取組みで、2002年に開始され14年の歴史があります。財団の目的は、全米の恵まれない子供たちに口腔ケアの必要性を教え、無償で口腔ケアを提供することです。2016年だけで30万人の子供たちが、1万人の歯科医を含む4万人のボランティアスタッフにより、無償の歯科治療を受けています。この活動へは、ヘンリーシャインデンタル・コルゲート・デキシスなどの企業がスポンサーとして支援しています。
笑顔が未来を変えるプログラム (SGL : Smiles change Lives Program) は、1997年にバージニア州で開始され、経済的に困窮している家庭の子供たちで、かつ不正咬合から自信がもてない子供たちを対象にしています。現在、全米で8,000人の子供たちがこのプログラムで無償の矯正治療を受けています。約750名の善意の矯正歯科医がこのプログラムに参加しています。
生涯を通じて笑顔にプログラム (Smile for a Life Time) は非営利団体であって、他のいかなる支援も受けられない11〜18歳までの子供たちに矯正治療を施しています。この団体は2008年に創設され、経済的に困窮し、かつ矯正治療の必要性が高い子供たちを支援しています。米国とカナダの矯正医が参加するこの団体の目標は、ひとりのドクターが1ヶ月に1人のペースで、貧困状態にある子ども達に無償治療を提供しようとするものです。(年間寄付総額に換算すれば、6万ドル(日本円で660万円)に相当します。)
矯正治療寄贈プログラム (DOS : Donated Orthodontic Service Program) は、米国矯正歯科医会 (AAO) が2009年に始めたプログラムで、スタート時は数州でしたが、今では全米に広がっています。このプログラムの特徴は、障害をもち、しかし保険をもたない子供たちへの支援です。AAOはこのプログラムへの矯正歯科医の参加を強く呼びかけています。参加するドクターは、年に1名以上の患者さんを治療する目標が課せられます。
米国矯正歯科協会基金 (AOSF : American Orthodontic Society Foundation) は、1995年に米国矯正歯科協会のメンバーによるチャリティーの一環としてスタートしました。この団体は一般市民に向けて歯科矯正の必要性を訴えるとともに、矯正に関するさまざまな情報の提供をしています。この基金の主な活動は、歯科関連企業との連携により、地方における少数民族や障害者を治療する歯科医に向けて、無償で矯正器材を提供していることです。
歯科医療における広告規制
一般歯科医と矯正歯科医は、米国歯科協会(ADA)が定める倫理ガイドラインおよび専門職業規定を守れば、いかなるメディアであっても自院の広告をすることができます。ADAが規定するガイドラインの第5節には、「虚偽もしくは誤解を招く行為は、いかなる媒体であっても患者に宣伝してはならない」とあります。この規定は、特定の歯科医院の治療行為による患者の不利益を防止するために、誤解を招く広告を規制するものです。加えて、公正取引委員会が歯科医による広告の妥当性をモニタリングしています。