矯正治療後の後戻りを防ぐ・・FB記事のまとめです
【第94回ブログ】矯正治療後の後戻りを防ぐ・・FB記事のまとめです
矯正治療のために2〜3年の年月と多額の費用をかけても、10年後に半数近くの人が後戻りを経験しています。後戻りを防ぐために、治療後の保定に2〜3年をかけていますが、もはや生涯保定を推奨する流れにあります。
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写真のような保定ワイヤーを、歯の裏側に接着固定する方法と、取り外しのできる保定装置(以下に紹介)を用いる方法があります。ワイヤーは食べかすが溜まったり、ブラッシングしにくいなどの問題から、歯周病の原因になりうるとの心配があります。
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取り外せる保定装置は無くしたり、壊したり、あるいは耐用年数が10年ほどなので、10年ごとに作り直さなければなりません。そのための追加費用約10万円が発生してしまいます。
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【クリアリテーナーで後戻りを防ぐ】
写真は真空成形で作ったクリア・リテーナーです。矯正治療を終えてのち、後戻りを防ぐために夜間、できれば日中も装着することが望ましいです。透明なのであまり目立ちません。
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クリアリテーナーは最終歯列の石膏模型があれば、簡単に作ることができるので、比較的安価に作れます。しかし問題はその耐久性です。
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調査によれば、歯の裏側に接着するワイヤーが5年間、取り外しのできるホーレー・リテーナーが4年間の耐久性に対して、クリアリテーナーはわずか3ヶ月ほどです。
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3ヶ月に一回新調しなければならないとすれば、そのコストはいかがなものでしょうか。5年間で20個作るとして、10〜20万円ほどかかってしまいます。
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【原因がわからないことが後戻りの原因】
なぜ、治療後に後戻りしてしまうのか? その理由はわからない、というのが本音のようです。ではなぜ、治療しなければならないほどに、歯並びと噛み合わせは悪くなってしまったのか?
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原因がわからないまま治療すれば、その原因を取り除けないので、治療後に後戻りしてしまうというのが実態のようです。確かに治療後の1年間は組織が安定していないので、維持・保定は絶対必要です。
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写真は取り外しのできる保定装置で、ホーレー・リテーナーと言います。最初に紹介した、前歯の裏側に接着したワイヤーと併用することもあります。接着したワイヤーは前歯だけなので、奥歯の維持・保定も必要な場合があるからです。
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取り外せる装置(リムーバブル・リテーナー)は便利ですが、無くしたり壊したりしてしまいます。リテーナーを使わなくなると、歯並びは再びくずれてきます。3年後に悪くなっても、患者さんはリテーナーを使わなくなった自分に責任があると思っています。
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【歯槽骨や基底骨から広げないと後戻りする】
取り外せる床矯正装置で上顎を拡大しても、すぐに後戻りしてしまうのは何故でしょうか? それは歯だけを外側に傾けていて、歯が植わっている歯槽骨(顎骨)を広げていないからです。
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更に、歯槽骨の先だけ広がったとしても、元となる基底骨が広がっていなければ、時間とともに後戻りします。歯を抜かずに治療するケースに、後戻りが多いのはこのためです。
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乳歯と永久歯が混在している小学生のころに、取り外せないタイプの急速拡大装置 RPE を用いるのが、最も確実な方法です。骨の柔らかい成長期に広げるのがいいです。
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大人になってからでも急速拡大ができますが、口蓋にアンカースクリューを4本ねじ込まなければなりません。ゆっくり広げる装置もありますが、やはり歯だけが傾きやすいので、後戻りしやすいです。
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大人になってからの上顎拡大は、舌を口蓋に付けるなどの機能訓練を伴わなければ、いずれ後戻りします。
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【フェネストレーションを防ぐために】
矯正治療を終えて保定のはずが、取り返しのつかない結果を招いてしまうのが、フェネストレーションです。基底骨や歯槽骨の拡大を伴わずに、歯列だけを広げて保定に入ると、歯根が顎骨からはみ出してしまう事故です。
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上顎を広げるとき、多かれ少なかれ、歯は傾きます。傾いた状態のまま固定すると、歯は咀嚼(そしゃく)や噛み合わせの力により、自然に直立します。直立すると、歯根が顎骨のなかで外側に向かって移動します。
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最終的に、骨が破れて、歯根がはみ出します。これを裂開(れっかい:dehiscence )もしくは開窓(かいそう:fenestration )と言います。今はまだ水面下ですが、矯正治療の普及とともに、社会問題化しつつあります。
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特に大人の患者さんで、抜歯をせずに治療するケースで、この問題を生じやすいです。それでも歯を抜きたくない場合は、実績のある矯正専門医に診ていただくのが良いかと思います。
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