イギリスの歯科矯正事情

【第2回】イギリスの歯科矯正事情

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年間13万人の新患が矯正専門開業医による治療をうけていて、更に25,000人の新患が全国の病院施設でNHS保険診療を受けています。地域によってはNHS保険診療を行なう矯正専門医が少ないため、治療開始までに6ヶ月から2年またはそれ以上待たされることもあります。従って、大方の人々は専門開業医による治療を選択する場合が多く、それでも以下のような分類によっては、18歳未満であれば無料措置が適用されます。

NHS保険診療に該当するかどうかは、「矯正治療の必要性インデックス」Index of Orthodontic Need (IOTN) で判定されます。矯正治療の枠組みは2006年に大きく変更され、このIOTNが導入されました。IOTNは咬合機能と審美性の両面から治療の必要性を判定します。ちなみに、グレード4と5が無償治療に該当します。このIOTNメソッドは、限られたNHSリソースを優先度の高い患者さんに振り向けるためと、噛み合わせの診断を矯正専門医によってのみ実施されるようにするためです。

グレード1  問題なし

グレード2  マイナーな問題がある。たとえば少し歯並びが悪い。上顎前歯が少し前突している。

若干の上下の交差咬合があるが機能上の問題は無い。

グレード3  不正咬合ではあるが、必ずや矯正治療を必要としない以下の状態:4ミリ以下の

オープンバイトまたは4ミリ以下の前歯の前突(出っ歯)、重なりが2ミリ以内の

反対咬合、機能的な問題を生じていないオープンバイト

グレード4  よりシビアな不正咬合であり、健康上の理由から矯正治療を必要とする以下の状態

:6ミリ以上の上顎前歯の前突(出っ歯)、2ミリ以上の重なりを有する反対咬合、

4ミリ以上のオープンバイトもしくは不揃い、機能的な問題を有する過蓋咬合(ディープ

バイト)、過剰歯をともなうケース

グレード5  とてもシビアな咬合機能上の問題がある以下の症例: シビアな乱ぐい歯(叢生歯)、

数多くの欠損歯、9ミリ以上の上顎前突(ひどい出っ歯)、下顎前歯が上顎前歯より

3.5ミリ以上前に出ている反対咬合、頭蓋顔面骨の形成異常を伴う症例、口唇口蓋裂

を含む。

専門用語が多く、正確にお伝えできているか心配ですが、イギリスでは18歳以下のお子さんであれば、グレード4及び5に該当すれば、無料で矯正治療が受けられます。かたや日本の場合、保険適用になるのは外科手術を伴うケースと口唇口蓋裂のみですので、グレード5の一部ということになります。保険システムは真似たが、この部分がまだ追いついていません。(実はイギリス人は欧米人の中でも歯並びが悪いことでつと有名でした。皆保険制度NHSのためかもしれません。でも日本はイギリスからさらに周回遅れにあります。)

IOTNの判定法の第2の部分は審美性です。エステティック・コンポーネント (Aesthetic Component : AC) と呼ばれ、矯正治療の必要性を審美の観点から10段階のカラー写真で示しています。レベル1は最も魅力的な歯並びで、レベル10は最もみにくい歯並びを示しています。この10段階スコアで見た目の良し悪しを判定し、矯正医にとっての治療ガイドともなります。矯正専門医がこの10段階写真と患者さんの歯並びを比較し判定します。この判定には、欠けた歯、変色した充填部、手入れの良くない歯肉状態を考慮しません。加えてこの写真ツールは、患者さんへの説明や動機付けにも用いられます。

修正画像

(追記)上記の歯科健康指標 (Dental Health Component : DHC) のグレード1〜5のうち、無料で治療を受けられるのは、グレード4と5です。更に、グレード3はボーダーライン症例と見なされ、写真の1〜10のサブカテゴリーのどれに該当するかを、審美性の観点から判定します。その結果、6番目の写真より悪い状態と判定されれば、やはり無料で矯正治療が受けられます。どうやらこのIOTN判定法はイギリスのみではなく、広くEU諸国全般に採用されているようです。日本も早期にこのシステムを採用すべきであろうと思うのですが、いかがでしょうか。

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