【第88回】歯科矯正の患者さん満足度について思うところ

【国民生活センターにみる歯科矯正のイメージ】

最新のデータではありませんが、全国消費生活センター(自治体組織の一部であって国民生活センターの下部組織ではない)の2014年調査によれば、美容以外の医療サービスで相談件数が多いのは「インプラント・歯科矯正・レーシック」であり、診療に対する不満が特に多いと言われています。
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矯正治療に対する不満としては、技術が悪い(仕上がりが悪い)、治らない、イメージと違うなどがあります。また、非抜歯による矯正治療を受けたのに、1年後に歯を抜くと言われたなどがあります。
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治療費に対する不満も多数寄せられています。治療代金120万円は高過ぎる、代金を前払いしたのに閉院の通知が届いた、通院できないので解約したい、転院したいので全額返してほしい、などです。
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歯科矯正にクーリングオフ制度はありません。事前に充分説明を受け、納得して治療を受けましょう。やむを得ず、治療を断念せざるを得ないときは、契約書の解約条件に従って解約することとなります。治療契約書はリスクも含めて先生から提示されますので、しっかり確認しておきましょう。

【アマポーラ・アンケートから見える患者さん満足度】

これまでにポスティングを4回実施し、約200名の方からアンケートに対するご返信をいただいています。そのうち、治療を終えられた方が36名いらっしゃいます。
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36名のうち、治療結果に満足と答えられた方が23名、不満と答えた方が13名いらっしゃいます。不満だからアンケートに応えようと強く思ったのかもしれません。またその反対に、満足でハッピーだからアンケートを返したいと思ったのかもしれません。
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いずれにしても単純に考えて、約3割の方が不満に思う治療はいかがなものかと思ってしまいます。不満の内容を見てみると、「後戻りした」「治らなかった」「もっとキレイに治したかった」という治療の質に関するコメントが多いです。
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治療期間・痛み・通院の煩わしさ・掛ける費用にたいして、結果的に2〜3割の方が不満に思う医療ははたして、まともなのか? この辺りに、矯正治療の普及を阻害する原因のひとつがありそうです。

【患者満足度が低い理由その1ー専門医を知らない】

「歯科矯正医には専門医制度があることを知っていますか?」との質問に、寄せられた回答のうち約3分の2は「知らない」と答えています。質問が良くなかったのかもしれませんが、矯正治療は専門医が望ましいということが、充分理解されていません。
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歯科診療科の標榜(ひょうぼう:看板や立て札の意味です)に問題があります。歯科医師1名につき、原則2つまで診療科を表示できるのですが、歯科分野で表示できるのは、歯科・小児歯科・矯正歯科・口腔外科の4つのみです。
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矯正歯科の専門知識や経験が無くても、「矯正歯科」と表示されてしまうと、患者さんは混乱してしまいます。いつも通っている歯医者さんに、お子さんの歯ならび矯正をお願いしたいと考えるのは、ごく自然な成り行きです。しかし、結果的に治らない。
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全国68,000件の歯科医院のうち、「矯正歯科」も一緒に表示しているのは約2万件あります。矯正専門医が常駐しているか、通ってくるのであれば安心ですが、専門医が全くいない医院はお奨めできません。矯正専門医は全国に約3,000人です。
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普通の歯医者さんが矯正治療を手がけても良いとは、世界共通のことです。しかし、矯正専門医でなければ、「矯正歯科」を表示したり、「歯科矯正医」であると言えないのが、世界の常識です。日本のガラパゴス化はこんなところにも現れています。

【患者満足度が低い理由その2ー後戻りする】

治療を終えて装置が外れたときの開放感は、澄み切った秋の青空のようです。しかし、10年も経つとアレアレ、なんか以前のガチャ歯に戻ってしまったみたい。
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親が出してくれたとはいえ決して安くなかった料金と、ガマンした2年間を考えると、不満に思うのも当然です。一度は治った歯ならびが、何故戻ってしまうのでしょうか?
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一番の原因は治療が早すぎたことです。まだ顎の成長が止まらない前に、治療を終えてしまった。個人差はありますが、一般的に顎成長は高校生の頃まで続きます。小学生の時分に治療を終えてしまうと、その後の変化に対応できません。
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親知らず(智歯)の問題もあります。後から生えてきた親知らずが、せっかく並んだ歯を圧迫し、歯並びを崩してしまいます。これもドクターの見通しの甘さに原因があります。
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矯正治療の保証期間は何年でしょうか? 一生ものでしょうか? ひとつの目安は10年です。15歳で治療を終え、25歳まで安定していればOKです。25歳までに後戻りしたならば、先生に相談してみてください。

【患者満足度が低い理由その3】 2期治療をスキップしてしまう

子供の歯から大人の歯に生え変る小学生時期の、混合歯列期の治療を1期治療といいます。また、大人の歯に生え変わった中高生時期の治療を2期治療といいます。
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メインは2期治療です。1期治療は必ずしも必要ない。1期治療は一部のお子さんにおいて、上顎の幅を広げたり、大臼歯を奥に移動するなどの、2期治療のための予備的な治療です。
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しかし親御さんは、生え変わり時期のお子さんの歯並びがとても気になります。親御さんの歯並びに対する関心は、幼稚園児や小学生低学年の頃にもっとも高くなると言われています。
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また、一部の矯正医は早期治療が望ましいと考えています。このため、ウェブサイトやSNSで早めの治療を呼びかけています。親御さんの気持ちと先生の意向がマッチした結果、必ずしも必要ない1期治療に取り組むことになります。
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問題は、1期治療でそこそこに歯並びが治ると、安心して2期治療をスキップしてしまうことです。顎成長に伴って、歯列が徐々に崩れてしまいます。「子供の頃に矯正しました」という割に、歯並びがまともでないケースは、2期治療をスキップしてしまった例が多いのです。

【患者満足度が低い理由その4 ー イメージと違う】

口元の美しさは、あなたの人柄を表すと言っても過言ではありません。笑顔からこぼれる白く美しい歯並びは、健康で知性的な、思いやりに溢れるあなたをイメージします。
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矯正治療を受けるとき、誰もが仕上がりのイメージをもって臨むものですが、ドクターとの事前のディスカッションが充分でないと、気まずい結果になりかねません。
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歯列幅が広ければ口角に影は出ません。舌側に傾斜気味の前歯は、人工的な印象を与えてしまいます。前歯の切端や歯肉ラインの美しさなど、自分で口元の写真に線を描くなどして、率直な希望をドクターに伝えてみるべきです。
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それでも全てが可能というわけではありませんが、ドクターは可不可を判断し、それならこうしようと、治療法を提示してくれます。

【患者満足度が低い理由その5ー治療期間が長い】

13〜15歳の中学生の2年間で治療を終えることができれば、期間が短く、費用も比較的に安く済むので理想的です。
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しかし、反対咬合などの顎骨に起因する不正咬合が認められるケースでは、早めの8〜10歳で1期治療を開始することが望まれます。
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1期治療は平均1年間を要し、20〜30万円ほどの追加の費用がかかりますが、1期治療が済んでいれば、一般的に2期治療の費用は安くすみます。
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問題は、乳歯列期の咬合誘導であったり、筋機能療法です。やらないよりはやったほうが良いかもしれません。ともすると、お子さんの成長とともにキャンセルされてしまいます。2〜3年の長期にわたり、費用もそれなりにかかってしまいます。
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矯正治療のゴールは同じでも、ルートはさまざまです。6歳で専門医に相談し、年1回のチェックを経て、10〜13歳頃に治療をスタートするのが、お子さんの負担も軽くすみ、費用も比較的にお得です。

【患者満足度が低い理由その6ー毎月の通院を負担に思う】

中高生から始める矯正治療が理想的なのは、費用と期間短縮だけではありません。自分で電車を乗り継いて通院できるからです。さすがに小学生のお子さんは、保護者の同伴が必要ですね。
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月1回の通院は本当に必要でしょうか? チェアに座って、結紮線をほどいて、磨いて再び結紮するだけで、調整料5,000円がかかります。通院回数が少なくて済むという医院も、今では珍しくなくなりました。実際、1.5〜2ヶ月に1回の通院でも治療は可能と言います。
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お子さんの通院のために、お仕事を休まなくてはならない親御さんが多いです。片道2時間余かかるという方もいます。通院回数は少ないに越したことはありませんね。また、治療期間が3年より2年で済むとありがたいですね。

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