イタリアの医療事情
【第86回】イタリアの医療事情
フィレンツェにお住いの 片庭未芽さんが、イタリアの医療事情について、ご紹介してくださっています。未芽さんの体験談ですので、内容がとてもリアルです。
ボンジョルノ! フィレンツェ観光ガイドサービス&ブライダルフローレンス(海外挙式プランナー)の代表 片庭未芽(カタニワミメ)です。大寒の厳しい寒さが身にしみる季節となりました。皆様はいかがお過ごしでしょうか。
イタリアでも今年は平年よりも寒さが厳しく、南イタリアでは大雪が降ったりして、新年早々学校が閉鎖されたりしました。インフルエンザも猛威を奮っています。そんな時には、イタリア人は、もちろんお医者さんのところに行きます。例えば今、具合が悪くて熱があったら、近くのお医者様に行きますよね?
イタリアだと・・・・
ホームドクターのアポイントを取って、もし、当日予約が取れない時は、「3日後に来てください」
と言われる場合もあるのです・・・! (もう3日後には、治っている場合もありますよね?) 日本とイタリアの医院・病院のシステムはかなり違うので、イタリアの病院のお話をご紹介したいと思います!
イタリアでは基本的に、ホームドクター( Medico Curante )として、国民一人につき一人の担当医が決められています。ホームドクターは ASL ( Agienda Sanitaia Locale ) という国の公共機関で管理されていて、日本でいう「国民健康保険」システムになっているのですが、日本と違う点は、「国民健康保険料金」は「基本的に無料」なのです! カトリック教会のポリシーに則り、「病人、怪我人は助けてあげないといけない」という哲学から、この国は昔から「医療費は無料」なのです!
「すごーい!理想的!さすが、イタリア!!」と思ったら、大間違いです。日本の諺にもありますよね・・・「タダより高いものはない」というのが・・・このシステム、実は蓋を開けてみると矛盾した事が沢山あるのです・・・・
矛盾1) 「無料だけど、当日診てもらえない」
ホームドクター(Medico Curante)は、自分の担当医として指名できますが、ドクターは最大1500名の住民の健康を担当するので、1日(受診受付は大抵半日)で診られる患者さんは約10-12名なので、当日予約はもちろん不可能! 風邪をひいて具合が悪いのに、今日診てもらえない! 悪化したらどうするのでしょう・・!?
矛盾2) 「無料だけど、検査は半年待ち!」
ホームドクターは専門医ではなく、基本的に何でも診られる「何でも屋」です。レントゲンや、CTスキャンなどの検査設備は一切ありません。だから、ホームドクターのところに行って、先生の指示を聞いて、「検査申請書」を書いてもらってから、検査予約を入れる事が出来ます。 しかし・・・!
検査予約も、混んでいる場合は、「半年後の予約になります」と言われたりするのです。「検査半年後って、病気によっては命取りになるのでは!?」と思いますよね・・・・!?
もし、緊急の場合は、「私立病院で、お金を払えば、直ぐにでも予約が取れます」と言われるのです。この私立病院の検査料金が半端なく「高額」なのです。例えば、普通の血液検査が250ユーロ!(約3万円)・・・公立なら20ユーロ以下でできる検査が・・・MRIでも500ユーロ(66,000円)という驚きの値段・・・これって、かなり「矛盾」していますよね・・・?
矛盾3) 「無料だけど、ホームドクターは予約を取れないから、救急病院に行くしかない!」
結局、病気や怪我をしたら、「どこに行けばいいの?」答えは「Pronto Soccorso: 救急病院」に行けば、どんな病気でも怪我でも診てもらえるのです。しかし本当に「緊急手術」が必要な人から、「ただの捻挫」の人まで全員「救急病院」に駆け込むので、凄い混雑になります。もちろん、重症な患者さんが優先されるので、軽症(例えば、捻挫など)だったら、4-5時間待ちは当たり前です・・・
私も過去に足を捻って、「骨折かもしれない・・・」と思いつつ、救急病院でレントゲンを撮るのに8時間も待たされた経験があります・・・(結局骨は折れていなかったのですが)
話せばキリがないのですが、イタリアの「恐ろしい病院」話は沢山あるのです・・・
昔,長男を妊娠した初期の頃、切迫流産で何度かフィレンツェの病院に運ばれたことがあります。かなり出血もひどく救急車で運ばれ,フィレンツェ北のCareggi カレッジと言う大きな大学病院に連れて行かれました。私自身もイタリアの病院に連れていかれたのは初めての事だったんです。ちょうど金曜日の午後だったということもあり、かなり待たされました・・・・
私自身はとても不安で,おなかの中の長男が,元気でいるのかどうかもわからないまま,待合室で待たされ,結局、夜になってしまいました。すでに夕食後ほどの時間になってようやく診察室に入れてくれ,診察した先生に言われた事は・・・・
「もう今日は金曜日の夜で,エコーを取る先生が帰ってしまったので,とりあえずこのまま週末は入院してください。月曜日の朝にエコーをとって,お腹の中の子の状態を調べます。」と言われ,おなかの中の長男が生きているのか死んでいるのかもわからないまま,三日間病室で寝かせられていました・・・
しかも入院した先は,大部屋 6人用に入れられました。その部屋のメンバーは・・・
1)私の隣は、今日流産してしまって泣き叫んでいるイタリア女性。
2)私の前は、中国から船で移民入国してきた妊娠5ヶ月に入った女性で,イタリアの法律では中絶できない妊娠期間に入ってしまったので,途方に暮れている彼女。
3)その横は、昨日の夜、レイプされたアフリカ人女性。
「まるで残酷な映画の世界!?」と思われるほど、悲惨な事情を持つルームメイトばかりで、三日間でかなりブルーになってしまった私でした・・・
一刻も早くこの病院を出たいと,訴えましたが,やはりお腹の中の子の為にも,絶対安静が必要だと言われ,月曜日を待ちました。長く長く感じた三日間がやっと過ぎ,月曜日のエコーの検査を受けることができました。幸いなことに長男は元気に育っているという検査結果で,本当にホッとしたのを覚えています。午後には退院することができ,一件落着でした。
しかし,私の周りでは,イタリアの救急病院に行って,かなり待たされたおかげで、症状が悪化し,助かるものも助からなかったと言う事例があるので,不幸中の幸いだったと思っています。イタリア在住の日本人の友人は,私も含め,日本に帰国した際に,日本の設備の整った病院にかかる人が多いのは,やはりイタリアの病院をあまり信用していないからなのです。
ただし,イタリアで妊娠出産を経験した私が,すごいなと思ったのは,イタリアでは,妊娠出産費用は全て無料です! 検査費用から,出産入院費用まで,全くお金を出したことがありませんでした。もちろん出産した後も,小児科のお医者さんや,子供の治療費等も一切かかりません。そういった意味では、イタリアは「医療はすべての国民に平等である」という素晴らしいポリシーを持っているのは間違いありません。
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