【第119回ブログ】犬歯の埋伏を防ぐオーソトロピクス療法 について

【第119回ブログ】犬歯の埋伏を防ぐオーソトロピクス療法 について、英国のケビン・オブライエン先生が自身のブログでコメントしました。以下はブログの内容です。

オーソトロピクス®︎の提唱者は、その治療法について多くの利点を述べています。ここでは、オーソトロピクス®︎の治療法が犬歯の埋伏を防止するうえで、効果的かどうかを検証します。

以前にオーソトロピクスによる治療法をこのブログで取り上げています。ジョン・ミュー先生は英国の矯正歯科医であり、この治療法を開発しました。この治療法の論拠は、咬合不正は多くが環境によるものだということです。つまるところオーソトロピクスの治療は、歯と顎の環境要因を改善することであると主張しています。彼らは取り外しのできる装置と、口腔筋機能の訓練を組み合わせて治療しています。一通りの治療費は7,500ポンド(約100万円)です。より詳しくは、オーソトロピクスのウェブサイトをご覧ください。

最近は、ご子息のマイク・ミュー先生が活躍されています。マイク先生はデンマークの Aarhus 大学で訓練を受けた矯正専門医です。ミュー先生父子は最近特に、Youtube動画に注力しています。近頃では、フェイスブック CEO のマーク・ザッカーバーグ氏に「睡眠時無呼吸症の可能性がある」というビデオを公開しました。父子はロンドンでオーソトロピクスの研修コースを開いて、世界中の歯科医を指導しています。

私は、オーソトロピクスの理論を証明してほしいと父子にお願いしましたが、これまでに納得できるエビデンスを受け取っていません。ジョン・ミュー先生は以下の論文を示されましたが、それを見て見ましょう。

CANINE IMPACTION: HOW EFFECTIVE IS EARLY PREVENTION? AN AUDIT OF TREATED CASES
John Mew and Mike Mew STOMA.EDU J (2015) 2 (2) 114-119
犬歯の埋伏:早期介入の効果は? 治療例から見る  ジョン・ミュー & マイク・ミュー
私はこの論文が載っているジャーナルをあまりよく存じていません。次の動画は、ジョン・ミュー先生が犬歯埋伏の治療と研究について語っているものです。

論文抄録のなかで、埋伏犬歯の早期介入については、それ自体が滅多にないことだったと述べています。それでも、乳犬歯の抜去を行なったが、多くの症例でうまくいかなかったと述べています。彼らは、オーソトロピクスの治療が上顎を前方に出すので、犬歯の埋伏が少ない結果に結びついたと説明しています。Q&A で紐解いて見ましょう。

Q)埋伏犬歯の発生割合におよぼすオーソトロピクスの効果は?
  彼らが行ったことは:

彼らは、クリニックにおける埋伏犬歯はほとんど例が無かったと言います。最終的に、彼らはデータを精査しました。しかし、この精査をどのように実施したかを明らかにしていません。一般的に調査研究の結果を導こうとするとき、再現性があって根拠のある結果を選びます。この場合は、ある一定数の患者さんにおける埋伏犬歯の数でなければならない。彼らはこれを行っていない。彼らが選んだ結果は、記憶にある埋伏犬歯の数と言わざるを得ません。

彼らが論文に書いたこと:

「埋伏犬歯は矯正治療において記憶されるべきものです。なぜならば、埋伏犬歯は困難を伴うものであり、容易に忘れることはできません。5年間の診療記録によれば、1,500人の患者さんをオーソトロピクスで治療しましたが、10歳以下の子供さんのひとりとして、犬歯の埋伏を生じていません。埋伏犬歯の治療は痛々しいので、5人のスタッフの誰も経験していないと言うことはあり得ません。」

私が思うに、彼らはデータの根拠を、埋伏犬歯の患者さんを一人も思い出せないと言う事実に求めています。私の考えが間違っているのならば、指摘してください。

彼らが明らかにしたこと:

ミュー先生父子は、10歳以下の子供さんにおいて、一人として埋伏犬歯の患者さんを思い出せないと言います。彼らはこの事実を、一般的な人口データと比較したとき、埋伏犬歯の発生割合は1.5〜4.5%であると指摘しています。最終的にこの違いは、いかなる統計的手法によっても有意に差があると、結論づけています。
論文の中で、いくつかの症例報告を載せていますが、上書きされているため不鮮明なX線写真となっています。彼らの最終結論は、「10歳までの拡大と前歯部の前方傾斜により、および口腔ポスチャー(姿勢位)の訓練により、犬歯の埋伏を減らせるか、もしくは予防することができる」というものです。

私が思うことは:

まず私たちが考慮すべきこととして、最近の研究によれば、埋伏犬歯のためのスペースを確保することが、犬歯の萌出につながるという点です。私はこのことを以前にブログで指摘しています。結果的に、上顎前歯を前方傾斜させるこの治療法は、効果的であると思われます。しかしながら彼らの論文から、オーソトロピクスが犬歯の埋伏を減らせるという主張を、肯定できるとは思えません。
私たちはこの論文が、彼らの治療を普及する最善のエビデンスになりうるのかどうか、考えなければなりません。あるいは、エビデンスとして不十分なのかどうか。また、この研究は以下のような問題を含んでいます。

● 埋伏の症例数をカウントするために、治療記録を精査していません。記憶に頼っているだけです。いかなる研究も結論を導く方法としては適当でありません。

● 矯正代替の治療を行うクリニックに来院した患者さんなので、一般的な患者さんとの違いがあります。

私の学究的な立場からの意見として、この論文は査定の対象となるレベルに達していません。彼らが、エビデンスがあると主張することに、驚きを隠せません。おそらく、ほかに別な情報があって、いずれ別な論文として世に出てくることを期待しています。
この記事は、英国のケビン・オブライエン先生のブログ記事を参照しています。
http://kevinobrienorthoblog.com

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