ビル・ハン先生とブライアン・ホッケル先生のお二人に共通するもの

【第133回ブログ】は、古くて新しいオーソトロピクスを先導する、二人の米国矯正歯科医、ウィリアム・ハン先生とブライアン・ホッケル先生の話題です。2019年シカゴ・ウィンターミーティングは、呼吸気道と睡眠時無呼吸に関するテーマが目白押しです。お二人は過去20年間にわたり、このテーマに取り組んできました。

【呼吸気道を中心に考えるビル・ハン先生】

ビルがウィリアムの愛称だとは知りませんでした。ウィリアム・ハン先生ほどに、呼吸気道を中心において治療する矯正歯科医はいないかもしれません。2006年にジョン・ミュー先生のレクチャーを聴く前から、顎関節と睡眠時無呼吸の治療に当たってきました。

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歯科用 CT スキャナーが普及したため、呼吸気道(のどの上気道)の断面積を簡単に計測できるようになりました。52 平方ミリ以下は NG です。52 ~ 112 平方ミリは問題ありでも許容できます。112 平方ミリ以上であれば OK です。

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ビル・ハン先生は、矯正で歯を抜くことと、歯列を後方に移動することに否定的です。大臼歯をさらに奥に押し込むことや、前歯をまとめて引っ込めることも、すべきでないと考えています。ハン先生は、上の前歯が出ている出っ歯(クラス2)を、後方への引っ張り移動をしないで治せると言います。

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ビル・ハン先生の文献サイトはこちらから。

https://facefocused.com/articles-4/

【歯科矯正の現状に憤りを感じるというハン先生】

ビル・ハン先生はいささか憤り(いきどおり)を感じています。2019年1月にマイアミで、米国矯正歯科医会 ( AAO ) が「歯科矯正と睡眠時無呼吸」をテーマに、初めてのミーティングを開催したからです。

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2006年に呼吸気道を中心にすえた、歯科矯正の研究会を立ち上げたビル・ハン先生にとっては、「何をいまさら」という気持ちなのだそうです。繰り返し述べているのは、「治療は前へ、前へ」であり、いかなるリトラクション(アゴを引っ込める、もしくは歯列を後方へ移動する)も、してはならないと訴えています。

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5年以内にスマイル・ダイレクト・クラブが、矯正歯科医による患者さんの数を、上回るだろうと予測しています。それ以前にクリアアライナーが、6歳からの顎成長に先鞭をつけるかもしれません。そのとき歯科矯正医は、オーソドンティストであると同時に、オーソトロピストにならざるを得ないと言っています。

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AAO ウィンター・カンファレンスのセッションはこちらから。

http://annual-session.aaoinfo.org/sessions/

24本の歯に舌が収まるかを心配するホッケル先生】

カリフォルニアで開業するブライアン・ホッケル先生も、呼吸気道を中心に矯正治療を考えている先生の一人です。親知らず4本と小臼歯4本を抜歯して、24本の歯で舌が収まるスペースを作ることができるのか、とても心配と言います。収まりきれない舌は、加齢とともに呼吸気道を狭めてしまうことでしょう。

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ホッケル先生の治療の特徴は、長期にわたりマネージメントすることと、選択肢の多さです。3歳までは、できるだけ母乳で育て、離乳食を早めない。タング・タイ(舌小帯短縮症)に気をつけ、6歳まで口呼吸にさせない。

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6歳から10歳まではオーソトロピクス・ステージもしくはポスチュアル・ステージと呼び、舌を口蓋に付け、唇を閉じ、軽く噛んで姿勢を正す。バイオブロック装置を用いて、上顎の水平前方への成長をはかります。

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11歳から必要に応じて矯正治療を行う。場合によっては外科矯正を併用する。中年からは、抜いた小臼歯のスペースを回復する。歯列を大きくして、舌が気道を塞ぐのを防止するためです。

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歯列のスペースをつぶさない、奥につめないというのが、先生の一貫した治療方針です。ホッケル先生のウェブサイトはこちらから。

https://www.hockel.com

【エアウェイ・サミットで講演するブライアン・ホッケル先生】

ブライアン・ホッケル先生は、北米フェイシャル・オーソトロピクス協会 ( North American Association of Facial Orthotropics ) を主宰しています。歯科医療従事者を対象に、オーソトロピクスの治療法を広めようとしているNPOです。

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タイムラップス動画(時間を早送りした Youtube 動画)を、下のアドレスからご覧ください。

https://www.youtube.com/watch?time_continue=12&v=3xbWXMrSPO4

抜歯と牽引で矯正治療を行ったお顔と、バイオブロック・オーソトロピクスで治療したお顔を見比べてください。あなたは、どちらのお顔を魅力的と感じるでしょうか?

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ブライアン・ホッケル先生は、2018年11月8日〜11日にラスベガスで開かれたエアウェイ・サミットにて講演されました。この学会は、呼吸気道と睡眠障害に関するもので、歯科を含む学際的なものです。この場で、オーソトロピクスの思想と手法が紹介されたのはとても画期的なことです。

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