歯並びが悪くなった原因は? エビデンスが示すもの



第143回動画は「歯並びが悪くなった原因は? エビデンスが示すもの」と題して、マイク・ミュー先生のメッセージを紹介しています。繰り返しのテーマですが、悪い歯並びや不正咬合は遺伝なのでしょうか? それとも、ライフスタイル(生活様式)の変化がもたらすものでしょうか? 世代を追うごとに、歯並びは悪くなり、アゴは小さくなり、鼻から下の中顔面が長くなったように感じます。

写真で記録された日本人の顔も変化してきました。明治人のガッシリしたアゴを見ることはもはやありません。昭和の団塊世代の顔と、平成生まれの20代の顔はやはり違います。親の形質を受け継ぐ遺伝がベースにあるとしても、育った環境(食事・運動・姿勢)によって受ける影響のほうが、もっとシビアなのかもしれません。

アゴが正常に育たない問題は、歯並びや噛み合わせのみならず、睡眠時の呼吸障害を通じて、うつ状態やADHDなどの精神疾患、心筋梗塞や脳梗塞などの循環器障害につながり、全身健康と生活の質(QOL)の低下をもたらしています。

悪い歯並びは遺伝でしょうか?
それともライフスタイルの影響でしょうか?
医学は問題の原因を特定し治療すべきです
多くの人がこのことを知って驚きます
矯正歯科医が公然と認めているのが
歯並びが悪くなる原因を知らないことです
顔が正常に発育しない原因も知りません
問題の原因を確定しなければ再発します
それは矯正歯科において重要な問題です
手術後さえ後戻りする可能性が高いからです
 ほぼ全ての患者さんが
保定装置を使うように指示されます
治療後の歯並びを保つために無期限にです
矯正専門医と一般の人々は
歯並びが悪い原因は遺伝だと思い込んでいます
確かに強い遺伝的要素があります
見た目に影響し 明らかに親に似ますが
 悪い歯並びに関しては
遺伝的要因を示す根拠は弱いです
 多くの優れたエビデンスは
環境やライフスタイルを示唆しています
この4月で10年が経ちました
 英国歯科ジャーナルに
ゲスト論説を発表してからです
矯正専門医や 英国矯正歯科医会に
 不正咬合の病因について
議論するようにお願いしました
医学は原因や問題を治療することだからです
今日の一般的治療法に合わない場合でもです
 この話題に入る前に
支援者の方にお礼を申し上げます
より良い有益なチャンネルを作っていきます
なぜ歯並びが悪くなるのでしょうか?
遺伝的な面で クラス3の不正咬合は 
突き出た下顎が 不正咬合の一種と見なされ
最も強い遺伝的要因を伴います
クラス3の遺伝性を示すエビデンスとして
 よく引用される例えには
 ハプスブルク家があります
この例えが一般的に遺伝を前提とする
エビデンスの質を反映していると思います
肖像画から観察されています
ハプスブルク家はクラス3の
突き出た下顎をしていました
遺伝的形質のある家系のようです
しかし 遺伝とする前提は
肖像画からのエビデンスに依拠しています
 親戚のデンマーク人も
クラス3の下顎に描かれましたが
遺体の一部が発掘され 調査結果によれば
クラス3ではなかったことが分かりました
当時の不正咬合は主に上流階級に
限定されていた可能性があります
クラス3などの何らかの不正咬合は
上流階級のハプスブルク家にとって
望ましい特徴と見なされていたため
画家がそのように描写したのかもしれません
ハプスブルク家は過度の近親婚姻による
副作用や病気を煩っていた可能性が高く
彼らの健康状態は遺伝だったのでしょうが
クラス3の不正咬合はそうではないでしょう
現代の矯正歯科が抱える深刻な懸念は
不正咬合が圧倒的に 遺伝によるもの
として扱われていることです
プロフィット教授の図表をご覧ください
彼は「現代の歯科矯正学」の著者です
世界で最も知られている教科書です
彼の幅広い知見から引用すると
米国の人口の約3分の1だけが正常咬合で
3分の2はある程度の不正咬合があります
不正咬合集団のうち5%以下の少数者のみが
原因がわかっている不正咬合を抱えています
大部分は 複雑で理解が不十分なうえ
遺伝と環境が影響した組み合わせの結果です
つまり分かっている原因は
全症例の約5%のみです
この5%が以下の病理学的状態を結論づけます
症候群 外傷 感染症に加えて
 より一般的な問題である
タングスラストや欠損歯と指しゃぶりです
矯正歯科に通院している平均的な子供は
問題の原因について理解されていません
ロバート・コルチーニ氏は米国の人類学者です
10種の咬合形質を比較調査しました
358組の非同一性と一卵性の双子を比較しました
遺伝率の推定値が0〜40%の
範囲であることを見出しました
遺伝には一貫性が無いことを示しています
骨格性および歯性の不正咬合において
遺伝による影響の限界を示しています
遺伝子がなければ成長しないことを
 理解することは重要です
40%の遺伝的決定性が意味するのは
ほとんどが環境に依拠していることです
ベルギーのカリン・キャレル教授は
より小さな集団について研究を行いました
 79組の一卵性双生児と
非同一性の双子を比較しました
データはとても慎重に収集されました
 彼女が発見したのは
線形測定値の分散から 平均76.2%が
遺伝的要因によって決められていたことです
 それは遺伝的要因が
より重要であることを示しています
しかしこれは 4分の1の確率で
 環境的要因を示し
ほとんど全ての不正咬合の要因に当てはまるので
 遺伝性だけではありません
そこで環境の変化を考えてみましょう
私達は少なくとも20万年にわたり 
 解剖学的には人類です
過去1万年までの遺伝的な変化はごくわずかです
文明化するまでの進化を通じてです
健康な人間は皆 完璧な歯並びでした
そしていつからか どこからか 
 人々が文明化されると
不正咬合が見られるようになりました
これは文明の到達レベルに
関連して起こるようです
考古学者が発見した興味深い話があります
人々がより洗練されたアイテムを使用するにつれ
より不正咬合になる可能性が高くなります
これは世界中のさまざまな場所で
完全に隔絶した状態で起こっています
 西は中央アメリカから
ユーラシアの肥沃な三日月地帯や
 東は中国までです 
文明が崩壊するにつれ不正咬合が減るという
 十分なエビデンスがあります
不正咬合は過去200年間で加速しているようです
ヨーロッパでは中世時代末期まで
誰もが智歯を含めて全ての歯がありました
生まれてから死ぬまで良い歯並びでした
5400種の哺乳動物は
いかなる種であっても健康であれば
生涯を通して良い歯並びを維持しています
英国で不正咬合が見られる唯一の哺乳類は
ペットと飼育されているキツネです
 これは現在 生存している
全ての先住民族にも当てはまります
BBCドキュメンタリーが様々な先住民族の
 集団を訪問しているのを見ると
アマゾンのジャングルからアフリカのサバンナ
オーストラリアの奥地にまで及んでいます
気がつくのは これら先住民族が
口蓋が広く歯並びが良いことです
顔貌も現代人より優れています
他にはスティーヴン・
ホーキング氏の例があります
彼は結婚当初は良い顔貌をしていました
少なくとも現代の規範では
顎がよく発達しています
彼は杖を持って歩いています
ALS(筋萎縮性側索硬化症)の症状を
 示し始めたからです
 数年後を見てみると
彼がどれほど変わったかが分かります
これは成長の変化ではありません
既に成長期を過ぎているからです
別の例は脳梗塞に苦しんでいる人々です
脳梗塞があると顔の片側が長くなります
顎骨が顔の片側で下がっていきます
通常これは表情筋の麻痺による影響です
 咀嚼筋ではありません
この種の顔の骨格の変化は遺伝ではありません
環境が影響しました 
環境があなたに影響を及ぼします
顔と歯に関してだけなら 
それほど問題ではないでしょう
どちらも非常に重要ですが
正しく成長していない顔は
正しく機能しないでしょう
睡眠時無呼吸などの障害が多くなっています
慢性のイビキ 顎関節痛 首と背中の問題や
可能性として中耳炎などの耳鼻咽喉の問題や
 鼻中隔彎曲などがあります
これらの原因は共通しています 
真剣に受け止めなければならない問題です
研究や議論を重ねて答えをだす必要があります
なぜこれらの問題が起きているのかを
 理解する必要があります
このチャンネルを初めてご覧になり
今回の動画に興味を持たれたら
チャンネル登録をお願いします
ほぼ毎週新しい動画を投稿しています
顎関節症や不正咬合について話しています
顔面構造の成長誘導などについて
実質的なアドバイスをしています
特に寛大な貢献をして下さった
ミシェルとビーナスにお礼を申し上げます
動画にお名前を載せたい方や
今後のトピックに投票されたい方や
数日早く私たちの動画をご覧になりたい方は
支援者になることをご検討ください
  patreon.com/orthodontics
ます 
集まった寄付金の半分は
頭蓋顔面健康財団に送られます
この新しい慈善団体は普及および教育研究
頭蓋顔面の健康全般に対する政策提言などです
最後までご視聴ありがとうございます
下記のリンクからご支援お願いします

コメントをどうぞ


友だち追加