矯正医による社会貢献(オーストラリア矯正事情)
Part6)矯正医による社会貢献(オーストラリア矯正事情)
ASO(オーストラリア矯正歯科医会)は、 “Give a Smile” (スマイルをあげよう)というキャンペーンを10年前から実施しています。矯正歯科医が1年に1人以上の子供の患者さんに、無料の矯正治療をプレゼントするというものです。2013年には433名のASO登録ドクターのうち、260名のドクターがこのキャンペーンに参加しています。約6割の専門医が参加していることになります。無料の矯正治療といっても当然のことながら、期間は2年以上かかり、費用は$5,000〜7,000豪ドルの価値のあるものです。
無料の矯正治療の対象となる子供さんは、公的補助対象の治療待ち患者リストから選ばれます。2012年には、12,000人の患者さんリストの10%(1,200人分)をASOプログラムが分担しました。2015年現在では、576名のASO登録ドクターのうち、350名のドクターがこのプログラムに参加しています。オーストラリアにおいては、毎年約15,000人の子供の患者さんが公的補助による矯正治療を受けています。このうち8〜10%の患者さんがASOボランティアドクターによる無償治療の対象になっています。今年の実績が1,500人を越えたことをお祝いしています。素晴らしい活動ですね。
【GP矯正の問題について】最後に一般歯科医による矯正治療の問題を取り上げてみます。
ASO(オーストラリア矯正歯科医会)は歯科評議会(DBA)に対して、一般歯科医(GP)による矯正治療の競業問題を提起しました。それによれば、「今現在、フルブラケットシステムで矯正治療を教えるGP向けのトレーニングプログラムは存在しません。一般歯科医は、臨床上の問題の発見(不正咬合の発見)、部分矯正(MTM)および早期の予防的ケアに限定されています。GP向けのプログラムは、複雑な矯正治療をマネージメントするスキルを会得できるものではありません。歯科評議会(DBA)の建議では、ガイドラインに沿って履修科目を反映した業態とするのが原則であって、この考えをASOは全面的に支持します。ASOは4つの主要な業態の領域について提案します。」意味不明ですが、難しい問題であるというのは分かります。
ASO(矯正歯科医会)は更に、患者さんの視点に立って、こうも言っています。「患者さんと、一般市民の皆さんが、矯正治療をおこなう専門医の資格について、混乱を生じているようです」と。そのため、多くの矯正歯科医のもとには、GP矯正で失敗した患者さんが駆け込んでくると言っています。
【まとめ】オーストラリアでは、歯並びは人生の基本的要件として考えられているためか、矯正治療に公的補助が有ります。子供さんの30〜40%が矯正治療を受ける普及率は理想的です。歯科医師イコール矯正歯科では無いようですが、徐々にGP矯正が広がりを見せています。広告規制については問題になりません。