【イタリア矯正事情part2】
治療費が50〜60万円というのはお手頃な料金かもしれません。低所得世帯に対する公的医療補助は約5%の世帯に限られているようです。何事にもアバウトな国ですが、本当のところは闇の中です。
矯正による治療費と国の医療補助
2013年の国際的な統計で、イタリア国民の平均年収は38,145米ドルで、日本の37,988米ドルとほぼ同じですが、実際の感覚でいうと、一般的な家庭の年収は、日本に比べて低いと思います。
矯正の治療費ですが、これも年齢や各自の症状によって異なりますが、一般に、プライベートな歯医者で、年間費用は 2,000ユーロ(26万円)〜 2,500ユーロ(32万円)前後です。括弧内は1ユーロを130円とした場合です。年間費用なので、治療に平均2年かかるとなると、総額は4,000ユーロ(52万円)〜5,000ユーロ(64万円)と日本の値段に近づきますね。「軽くて二年もかからない人もいるし、長ければもっとかかるし、最終的な金額は人によって変わってくる。ただ、一年間にかかる金額は大体このくらい」と答えてくれました。平均的なイタリア家庭では大きな出費で、分割払いという支払方法が一般的です。
一方、公的な医療機関による歯科矯正治療費は、年間500ユーロ(7万円)以下での治療が可能です。しかし、国の調査によると、イタリア人で1年間に歯科に行った人は全人口の37.9%で、そのうち公的な医療機関で歯科治療を受けた人は全人口の5.4%にとどまっています。6歳から14歳までの子供のみの調査でも、公的な医療機関での治療患者が8.5%なのに対し、プライベートな医療機関での治療が38.4%と、公的医療機関の4.5倍となっています。
イタリアは日本のような国民健康保険がありません。国民は公的なかかりつけ医に無料で受診できる制度があり、何か医療に関する問題があれば、まずはかかりつけ医に相談します。この総合的な医者が症状を記入したチケットと呼ばれる紹介状を作成し、このチケットがあれば公的医療機関での診察が最大34.66ユーロ(4,700円)までの費用で可能です。一方、プライベートの医院の場合は、チケットが使えず、全額が患者負担です。
矯正を含む歯科治療も同様の対応で、国や州による治療費の補助があるため、公的医療機関での矯正治療は、プライベートの歯科医院の約10分の1の治療費となるのですが、イタリアでは公共医療機関は患者数に対して施設の数が圧倒的に不足しており、実際の治療まで時間がかかる、または平日の昼間のみの診療となり、学校や仕事に差支えがある、などの理由から、公共医療機関での歯科利用者の割合は全人口の約5%、という数字が長年定着しています。国民が、国という組織に全く期待していない、という意識が反映されています。
低所得者層の公的医療補助は、各州によって異なりますが、たとえばローマでは、6歳未満65歳以上が対象で、矯正治療者にはまず当てはまらない状況です。失業者に対する補助でも、基準年収が約1,300ユーロ(17万円)とかなり低いので、ほぼないに等しい状況です。
民間の医療保険もありますが、年間保険金は約1,000ユーロ(135,000円)で、適用に対して細かい規定がかなりあり、適用までに時間がかかることから、普及率は低いです。