イギリスの歯科矯正事情

【第5回】イギリスの歯科矯正事情

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NHS保険診療と自費診療では使う装置に違いがあります。自費診療ではセラミック装置を15.4%、リンガル(裏側)装置を3.8%使うのにたいして、保険治療では3.7%のみがセラミック装置を使っています。19歳以上の成人矯正については2007年のデータがあるのみで、NHSと自費を含め、32,600人が治療を開始しています。最近の調査では、矯正専門医の26%が成人矯正も行なっているとの報告があります。またリンガル(裏側)矯正は僅か0.3%ということなので、イギリスでは圧倒的に子どもの矯正が多いことが分かります。開業医がおこなう自費診療の成人矯正では、目立たない装置(セラミックまたはインビザライン)が70%と高く、NHS保険診療の審美装置は3.6%と少ない。(保険適用の成人矯正は審美目的ではなく、咬合機能に問題のあるレベル4・5の極端に悪い歯並びと思われるが、メタル装置以外の選択肢はなさそうです。)

矯正料金について

18歳以下の矯正治療はNHS健康保険でカバーされます。しかし、多くの場合、大人の矯正は自費です。以下のチャートに自費診療の目安となる矯正料金を示しています。(便宜上1英国ポンド(£)を150円として換算しています。)矯正料金は日本と比べても約半値です。この違いはどこから来るのでしょうか?為替レートだけの違いでは無さそうです。今後の詳細な調査が待たれます。

  矯正装置の種類       自費診療コスト

メタル装置         £2,000〜2,500    30〜40万円

セラミック装置       £2,000〜3,000    30〜45万円

リンガル(裏側)装置    £5,000〜8,000    75〜120万円

インビザライン装置     £2,500〜4,500    40〜70万円

歯科医療制度について

イギリスの健康保険制度(NHS)は1951年に制定されました。健康保険には当然、歯科治療も含まれます。治療内容に応じた個人負担は3段階に分けられ、最大でも£222.5(33,000円)となります。

バンド1  £18.80(2,800円)  検査・レントゲン・スケーリング・およびその他の予防処置

バンド2  £51.30(7,600円)  部分封止・歯髄治療・抜歯処置・及び上記処置と併せた場合

バンド3  £222.50(33,000円)  義歯製作・クラウン・ブリッジ製作・および矯正を含む

NHS健康保険制度によって、全額無料の歯科治療を受けられる対象者は以下のとおりです。

・18歳以下の子ども

・19歳以下の学生

・妊婦または1歳以下の乳児を育てている女性

・支援を受けている障害者

・年金生活者

・納税を免除されている世帯または個人

矯正治療の公的助成について

NHS制度では18歳以下の全ての子どもは、矯正治療を必要とするかどうか、歯並び診断を受けることができます。しかし、矯正治療費が無料となるのは噛み合わせに機能的な問題をかかえているケースです。NHSはこの評価のために、【第2回】で紹介したIOTN(矯正治療必要度インデックス)を用いています。レベル3の一部と、レベル4・5の不正咬合が無料措置に該当し、診断・装置・調整・保定までの一連の費用がカバーされます。例外は、取り外せる床矯正装置を無くしたり壊してしまえば、£60〜70(10,000円)を負担しなければなりません。大人の矯正治療はほとんどの場合、NHS保険の対象になりません。

低所得世帯への公的助成について

NHS健康保険による無料の医療措置を受けられるのは、保有する金融資産が以下の金額を越えない世帯です。すなわち、住居を所有する人は £23,250(350万円)、住居を持たない人は £16,000(240万円)がその条件です。(所得ではなく、金融資産で見るところがいかにもイギリスらしいですね。)

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