欧州なみに普及させたい日本の歯科矯正
【第78回】欧州なみに普及させたい日本の歯科矯正
これまでのFacebook記事をまとめています。
【日本とアメリカをざっくり比べてみました】
歯科矯正では先進国のアメリカと、後進国と噂される日本を、マクロの視点からザックリ比較してみました。分かったことは3つです。①アメリカの医療費は高い。②日本人はムシ歯に悩まされているようだ。③歯科矯正の普及は、予防歯科に革命をもたらすかもしれない。
日本の場合:人口は1億3000万人でGDPは500兆円
総医療費は40兆円でGDPの8%(注1)
歯科医療費は2兆7000億円で総医療費の6.8%
矯正治療費は2500億円で歯科医療費の9%
米国の場合:人口は3億2000万人でGDPは1800兆円
総医療費は300兆円でGDPの17%
歯科医療費は12兆円で総医療費の4%
矯正治療費は1兆8000億円で歯科医療費の15%
①米国の医療費が高過ぎることは、GDPの17%を医療に向けていることから分かります。OECDの標準は10%前後です。(注1)日本は8%でしたが、介護を含めれば50兆円で10%となり、案外高いのではないかと議論されつつあります。(2013年データ)
②日本人はムシ歯治療のため頻繁に歯科通院するらしい。総医療費に占める歯科の割合が6.8%に対して、米国は4%と低い。米国ではムシ歯治療費が高いので、ムシ歯にならないように普段から気を付けています。デンタルフロスとフッ素入り水道水が効果的なのでしょうか?
③矯正が普及すれば、当然のことながら、ムシ歯や歯周病が少なくなり、歯科医療費の節約に結びつきます。また、数字では把握できませんが、歯周病に伴う心疾患や糖尿病にかかわる医療費の低減も見込まれます。
【ついでに、日本とイギリスも比べてみました】
イギリスの公的医療保険システムNHSは、日本の健康保険制度とよく似ています。自己負担がほとんど無いので、日本より徹底しているかもしれません。しかし、保険財政は逼迫していて、頻繁に制度改正をくり返しています。
英国の場合:人口は6500万人でGDPは270兆円
総医療費は25兆円でGDPの9.3%
歯科医療費は8120億円で総医療費の3%
矯正治療費は800億円で歯科医療費の10%
日本の場合:人口は1億3000万人でGDPは500兆円
総医療費は40兆円でGDPの8%
歯科医療費は2兆7000億円で総医療費の6.8%
矯正治療費は2500億円で歯科医療費の9%
①イギリスの医療保険はほとんどが税金で賄われています。個人負担は自由診療以外にほとんど無い。
②イギリスの歯科のウェイトは米国と同じくらい低い。ムシ歯が少ないと言うことです。
③イギリスの矯正料金は日本の半分以下、それも保険でカバーされている。イギリスでは、
年間新患数20万人 X 40万円 = 800億円 に対して日本では、
年間新患数30万人 X 85万円 = 2500億円 と推定されます。
イギリスの医師・歯科医師は、報酬の高い米国に流出するという問題があります。その一方で、インド・シンガポール・香港のドクターがイギリスに流入しているという側面もあります。
【せめてヨーロッパ並みに普及させたい日本の子供の歯科矯正】
日本・イギリス・アメリカ、3カ国の矯正治療の普及率を推定してみました。日本:英国:米国は、日本を1とすると、1:2:4で表わされそうです。
日本の場合 :年間30万人 X 子供の割合60%として、10歳年齢の子供数116万人で割ると、15%となります。都市部では2割を超えても、地方都市では1割ほど、田舎では5%を下回ることでしょう。
イギリス・UKの場合:(年間20万人 X 子供の割合100%)を10歳年齢の子供数75万人で割ると、30%の普及率です。上記には、大人の自費診療数を含んでいない可能性があります。
アメリカ・USAの場合:(年間300万人 X 子供の割合75%)を10歳年齢414万人で割ると、55%の普及率となります。カリフォルニア州や東部州ではそれより多く、60%と推定されます。
100%自由診療の米国と、(NHS保険診療が65% + 自費診療35%)の英国と、ほとんどが自費診療の日本では、普及率に大きな差があります。この差はどうして生まれたのでしょうか? その原因を考えてみたいと思います。