顎手術は増えているのか?
【第90回ブログ】顎手術は増えているのか?
日本人に多いと言われる受け口(クラス3)は、難度により顎切断手術によって治療されています。2008年(10年前)のデータによれば、顎を切る手術を受けた人は約4000人で、そのうち、受け口(クラス3)の割合は約7割弱を占めていました。欧米の子供たちに出っ歯(クラス2)が多いのに対して、日本の子供たちは受け口の傾向が強いようです。前後に長い欧米人の頭蓋顔面に対して、アジア人は平べったいからでしょうか?
顎の手術を受けるケースに限り、3割負担の健康保険が適用されます。また高額医療補助も受けられるので、個人負担は軽くてすみます。どんなに歯並びが悪くとも、まともに噛めなくても、顎骨を切らなければ健康保険を適用されません。いまどき、歯並び矯正は「見た目の問題」と考えている行政のガラパゴス政策に、一石を投じたいです。写真はアンティポフ先生のサイトからお借りしています。
【アデノイド顔貌を改善しようと思ったら】
10年前の国内の調査で、顎矯正術を受けた4000人/年間のうち、下顎が小さくオトガイが後退しているアデノイド顔貌の人は8%、上顎が前方に突出した出っ歯(クラス2)の人は、同じく8%でした。まれに、睡眠時無呼吸症 OSA のために、両顎を前方に移動する手術を受けた方は1%未満いました。10年前のデータですから、今はもっと多いのかもしれません。
写真はカリフォルニアの口腔外科医アンティポフ先生のケースです。下顎が小さいアデノイド顔貌でした。上下顎とも矯正術を受けています。年齢が10歳も若返った感じがしますね。
【信頼性が高いといわれる顎矯正術】
2009年のデータでは、世界中で150万人が受けたと言われる、顎矯正手術ですが、それに代わる有効な手段が見つからないというのが真実のようです。20年前の英国では、上の前歯が下より7ミリ以上突出していれば、顎矯正術の対象でした。いまでは、5ミリ以下でも顎手術によって治療するケースが多いと言います。根底には、ハーブストやジャンパーなどのクラス2・クラス3顎間装置の効果が、いまひとつ信頼性に欠けるという問題があります。
しかし、顎骨を切るのを嫌がるお子さんがいることも事実です。少しばかりの出っ歯や受け口ならば、我慢しても良いと考え、手術を拒否するお子さんは約半数いるとの報告があります。
ニュースソースはhttps://orthotropics.com/__trashed-4/
【無呼吸症のために顎矯正手術を受ける】
睡眠時無呼吸症の対策は3つの方法があります。ひとつは シーパップ CPAP、矯正的に空気を送り込む酸素マスクのようなものです。2つ目は歯医者さんが作ってくれるリテーナー、下顎を前に突き出します。そして、3つ目は顎の手術です。
写真は上下顎ともに前方に移動した結果、ノドの空気の通り道(気道)が大きく広がりました。ここまで広がれば、もはや無呼吸症の心配はありません。睡眠の質も格段に良くなっていることでしょう。
下顎だけを前方に移動する手術によっても、気道は大幅に改善します。舌は下顎に支えられているからです。この場合は、上顎との噛み合わせを再建しなければなりません。矯正歯科医が対応します。慢性的に眠気を解消できない方は、一度、睡眠外来で診察を受けたのち、お近くの矯正歯科の先生にご相談されてはいかがでしょうか?歯並びだけでなく、顎の問題も矯正歯科の先生はとても詳しいです。
【リバース矯正という現実】
子供のころに矯正治療を受けても、大人になって戻ってしまったというのは残念な話です。上下4本の歯を抜いたにもかかわらず、顎の中に歯列が収まらない理由はなんでしょうか?左の写真は大人になって、歯列が内側に倒れ込み、上顎が狭くなりました。よく舌を噛んでしまうと言います。熟睡できず、慢性的な疲れを感じます。偏頭痛と肩こり、顎関節の痛みにも悩まされています。
ハン先生は、歯を抜いたスペースにインプラントを埋め込み、上顎を拡大する手術を患者さんに施しました。これによって、舌が収まるスペースが生まれ、舌を口蓋に付けることができます。顔立ちも若返り、上記のさまざまな症状を解決することができました。ニュースソースは Face Focused Orthodontics の William Hang 先生の動画ブログから。