呼吸が一番で、歯並びは二番です

【第142回ブログ】は2018年11月から12月にかけての Facebook 記事を転載しています。街で見かける若い人のアゴが、とても小さくなっていることに気がつきませんか。小さいばかりでなく、アゴがだらんと落ちている人も見かけます。歯並びや噛み合わせは言うまでもなく、呼吸に差し障りを生じています。特に睡眠時の呼吸障害が、全身健康や精神状態によくない影響をもたらしています。

【歯並びはともかく、眠れない状態を改善してあげたい】

噛み合わせが良くない、歯並びが悪いために、矯正治療を受けようとする子供さんの、親御さんに尋ねました。「あなたのお子さんは、良く眠れていますか? 頻繁に寝返りを打ったり、イビキをかいたり、オネショをしていませんか?」
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アンケートの結果は、17〜30%が「良く眠れていない」というものでした。しかし、ドレク・マホーニー先生は簡単な検査装置を用いて、矯正治療に来院した子供一人一人の、睡眠状態を実際に測ってみました。
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睡眠時の呼吸障害指数( RDI : 1時間あたりの無呼吸と低呼吸回数の総和)を測ったところ、実に92%の子供に、睡眠時の呼吸障害が認められました。
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歯並びが悪い、噛み合わせが悪いお子さんは、ほとんどが良く眠れていないということです。歯並びは永久歯が生え揃ってから矯正できるとしても、あなたのお子さんが良く眠れていない状態を、放置しておいていいものでしょうか?
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https://www.youtube.com/watch?v=I19fdwSO880

【アゴを前にせり出しても、呼吸がしづらいほどに、アゴは小さくなってしまった】

出っ歯ぎみの人は、下アゴが後退しているので、呼吸気道を狭くしていると思っていたら、そうでもなさそうです。中国・河北医科大学の研究報告は驚くべきものでした。

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クラス2の出っ歯ぎみの人で、下顎を前にせり出している人の呼吸気道は狭く、反対に、下顎が後退している人の気道は広かった。このことは何を意味しているのでしょうか。

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クラス2なので、上顎が前に出て、下顎が後退しているケースが多いです。問題なのは、下顎を前にせり出しているにもかかわらず、十分な呼吸気道を確保できない人が多いことです。

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普段から呼吸が苦しいので、アゴを前にせり出す習慣が身に付いているのでしょうか。出っ歯を治療するために、上顎を後退させると、ますます呼吸気道が狭くなってしまいます。

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思春期を過ぎてからアゴの骨を切って気道を広げるか、一生、イビキと無呼吸に悩まされることになりそうです。そうならないために、6〜8歳から上顎拡大と前方成長をはかり、下顎と噛み合せることで、下顎の成長誘導をはかりましょう。

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河北医科大学の研究報告は以下の Angle Orthodontist よりご覧いただけます。矯正学教室の研究目的は、「顎関節位置と気道面積は関係しない」という定説を覆すためでした。

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http://www.angle.org/doi/pdf/10.2319/040518-253.1

【ツインブロックに似た、下顎前方誘導のためのクリアアライナー】

前回で、小さいアゴと呼吸気道の問題を取り上げたら、タイミング良くインビザラインから、下顎の前方成長を促進するクリアアライナーの紹介がありました。

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10歳くらいの混合歯列後期から使い始める装置です。これまでのツインブロック装置 ( Twin Block appliance ) のようなイメージですが、マルチパーパス(多目的同時進行)です。

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アライナー装着と同時に、オーバーバイト(過蓋咬合)やクロスバイト(交叉咬合)を治療できるので、治療が効率的に進みそうです。

インビザラインは米国アラインテクノロジー社の登録商標です。

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【再評価される、ツインブロック機能矯正装置】

90年代にイギリスで大流行した矯正装置に、ツインブロックがあります。なぜ大流行したかは、おそらく保険治療の対象になっていたからでしょう。機能矯正だけで完結したイギリス人の歯並びが悪かったことは有名です。

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スコットランド人はとても長い顔の人が多いです。アジア人に比べて、ヨーロッパ系の人は、狭い上顎と後退した下顎により、出っ歯(クラス2)になりやすい。そのため、下顎を前方に動かす装置を必要としました。

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ツインブロック装置は、イギリスのウィリアム・クラーク先生が80年代に発明しました。歯を並べるというより、顎顔面の成長に関与するので、機能的矯正装置 ( Functional Appliance ) と呼ばれています。

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この装置の問題は、下顎を少しづつ前方に動かすために、院内もしくは歯科技工所で、削ったり足したりの繰り返しの作業を必要としたことです。また、上下斜面で当てるので、下顎が一気に前に出てしまい、治療的に良くないとのコメントがつきました。

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しかし、この問題は、クリア・アライナーによる小刻みの変化によって解決されることでしょう。今、改めてツインブロックが、矯正の早期治療のメインストリームになる予感がします。

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