アゴと睡眠の深い関係
【第121回ブログ】は、アゴと睡眠の関係についてまとめた、Facebook記事のシリーズ2回目です。40代で半数の人が悩むイビキと睡眠時無呼吸症は、その原因が6歳からの成長期にあると言います。軟らかい食事と、運動不足と口呼吸の習慣が、成長しないアゴと不揃いの歯並びをうんでしまうことは誰もが知っています。問題は、狭いアゴの中で舌が下がり、呼吸する気道を狭めてしまうことです。
【お口を閉じて眠っていますか?】
図は、頭の向きを上向きにしたときと、下向きにしたときの、アゴの先から頚椎までの距離を比べています。当たり前ですが、上を向くと気道が広くなり、下を向くと気道が狭くなります。
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猫背でアゴを前に突き出して歩いている人は、単に姿勢が悪いばかりでなく、呼吸がしづらいからとも考えられます。まっすぐ立った姿勢でアゴを引くと、呼吸がしづらくなります。さらにアゴを引いた状態でお口を開けると、息をするのが難しくなることを実感しますね。
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お口を閉じて眠っていますか? 高い枕に仰向けになって、お口を開いて眠るのが最悪です。下顎と舌が、喉の気道をつぶしてしまうからです。睡眠の質が極度に低下します。
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高めの枕に横向きになって、首を伸ばして眠ると質の高い睡眠を得られます。このとき必ず、お口を閉じましょう。100%お口を閉じるためにリップシールを用いるのも一つの方法です。
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日本髪を結っていた江戸・明治の人が、あの高い箱枕で仰向けに寝ていた時代がありました。多分にアゴが十分に発達していたので、それでも気道をつぶすことはなかったのだと思われます。
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【浅い眠りの深い問題】
ここ5年ほどでしょうか、街には睡眠医科や睡眠歯科の看板を見かけるようになりました。それだけ眠りで悩んでいる方が多いということでしょう。
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睡眠時間が足りないからか。あるいは眠れないからなのか。不眠症の原因は72個もあると言われています。大きく神経系・ストレス系・呼吸系に分けられます。
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私たちが関係するのは、3番目のアゴと舌にかかわる、呼吸系の睡眠障害です。睡眠時の閉塞性の無呼吸症 OSA です。1時間に10回もの無呼吸状態にあれば、睡眠の質が良いとは言えません。
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米国の全人口の10%に睡眠時無呼吸症 OSA がみられるとのことです。日本も同じような状況にあると思われます。いつも眠い、集中力がないなど、大きな居眠り事故には OSA が原因しています。
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睡眠歯科学会は主に、取り外しのできる口腔内装置を患者さんに渡しています。下顎を前に出して、舌を喉から遠ざける効果を期待できます。
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【睡眠歯科はバンドワゴンなのか?】
睡眠医科や睡眠歯科は必要以上に、患者さんを心配させているとの指摘があります。やたらに難しい診断だったり、高額な治療費を請求されたりとトラブルがあるためです。
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患者さんからすれば、大げさに病態をクローズアップして、医業収入を上げようとする企みではないかと、疑ってしまう。行政もトラブルを回避するために、ガイドラインを作って予防線をはっています。
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とはいえ、初期の段階では誤解も生じます。しかし現実に、写真のような狭い気道をもつ患者さんの QOL を良くしてあげることは、医療の課題です。そうならないように、予防することも大事です。私たち NPO は予防に注力しています。
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写真は、後退したアゴと舌が、気道をつぶしている中年男性の CT 画像です。マッピングしているので、鼻腔からノドにかけての空間が立体的に描写されています。この患者さんは結局、外科手術を受けて上下のアゴを前に出し、気道を広げることができました。
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【睡眠時の酸素は足りていますか?】
以前のニュースになりますが、タイの洞窟から13人が救出されて本当によかったですね。洞窟内は酸素濃度が低かったそうです。睡眠時無呼吸症 OSA も同じく、体内で消費する酸素濃度が低くなる危険性があります。
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OSA そのものが命にかかわることでなくとも、低酸素の睡眠が長く続くと、慢性疾患が体を蝕むということです。心臓病や糖尿病、高血圧、脳血管障害などを起こしやすくなります。
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米国の場合、40歳以上の1割が睡眠時無呼吸症を患っているといわれ、平均して誰もが10年間の寿命を縮めていると考えられています。
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写真は、血中の酸素濃度を測定するパルスオキシメーターです。睡眠外来で診察を受けると、この装置をつけて、睡眠時の酸素濃度の変化をみることになります。
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