悪い歯並びに隠された問題



第120回動画は、「悪い歯並びに隠された問題」と題して、オーストラリア・シドニーで開業する矯正専門医 ドレク・マホニー先生のビデオメッセージをご紹介しています。歯ぎしりと歯の摩滅から、その原因は睡眠時の呼吸障害にあると考えました。舌の両側についたホタテ貝のような歯列の跡も、その有力な証拠です。口腔内の奥を見てみると、口蓋垂(のどちんこ)や軟口蓋さえも見えません。そのことも、この患者さんが年齢とともに、睡眠時の呼吸障害や無呼吸症 OSA に悩まされることを暗示しています。したがって、抜歯をして歯並びを整えるだけでなく、舌が落ち着くに十分な面積の口蓋を確保してあげることが、この患者さんの生涯にわたる QOL を向上することにつながります。

マランパチー分類とは、お口を開けた状態で、口蓋垂(のどちんこ)の見え具合を、1〜4の段階で分類したものであり、もともとは内視鏡の入れやすさを判断するものです。
  クラス1: 口蓋垂がよく見える、喉の奥の空洞まで見える
  クラス2: 口蓋垂の先端が隠れて見える
  クラス3: 口蓋垂の根元だけと、軟口蓋が見える
  クラス4: 口蓋垂も軟口蓋も見えず、硬口蓋しか見えない

初診の患者さんで 年若いミッシェルが
歯並びの相談に来られました
ここで私が 歯科医に伝えたいのは
歯の摩耗(咬耗)と 歯ぎしりの関係です
ミッシェルの普段の噛み合わせを見てみます
彼女は過蓋咬合で 叢生を気にしています
*叢生は前歯の不揃い*
普通の矯正歯科医なら 
歯並びを良くするだけですが
さらに奥を見てみると
(お口を大きく開けて)
舌の横にスカロッピングが見られます
*scalloping : ホタテ貝のような歯型の跡*
これは睡眠時の呼吸障害の典型的なサインです
マランパチー分類の クラス4です
クラス4は 硬口蓋だけが見えている状態で
口咽頭の気道開口部が見えません
歯の表面摩耗(咬耗)を見ると
 犬歯がすり減っています
歯科医がそれに気づき 歯ぎしりの原因が
ストレスとは限らないことを認識すべきです
マランパチーのクラス4とスカロッピング
タングタイなどが原因かもしれません
これは歯が欠けているのではなく咬耗です
(普段するように噛んでみてください)
(顎を前に出してみて)
 ここをご覧ください
最高のダイヤモンドバーを使う歯科医でさえ
これほど上手く削ることはできないでしょう
このように削られている理由は
歯ぎしりをしているからです
どのように 中切歯11が 下顎前歯41の
歯の摩耗と関連しているかご覧になれます
患者さんが睡眠時に 顎を前方に出して 
 呼吸気道を開き
舌のスペースを作っています
(噛み続けてください)
この位置で舌が落ち着き 
舌に歯型の跡がついています
マランパチーと 歯の咬耗と
スカロッピングに着目すべきです
歯科矯正と 呼吸気道もしくは
睡眠歯科学を組み合わせると
より良く患者さんを治療できます
歯並びを治しても 歯をすり減らしたり
加齢とともに睡眠時無呼吸になっては 
 全く意味がありません

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