歯並びや噛み合わせが悪くなる原因は、実は分かっていない

【第141回ブログ】は2018年11月の Facebook 投稿記事の再掲です。Facebookなどの SNSメディアはどんどん下に流れていくので、転載して留め置く必要がありました。

【実は原因がわかっていない不正咬合】

歯並びが悪くなる原因は、小さいアゴに歯が並びきれないからというのは、自明です。アゴが小さい原因は何かと問われたら、それは生活習慣としか答えるほかはないでしょう。

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生活習慣が原因としても、下顎が前に出ていたり、歯を閉じられない開咬であったり、アゴが歪んでいたりと、人によって様々に変化しています。そのため生活習慣と一言で割り切れるものではありません。多少なりとも遺伝要素もあるのでしょう。

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究極のところ、歯並びや噛み合わせを悪くする原因を、歯科矯正医は分からないと言います。原因は分からないが医療ニーズがあるので、矯正治療で見た目と機能を改善しています。

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歯並びを悪くするウィルスやバクテリアがいるわけではないので、明確な原因は分からないと言います。しかし、ここ200年の間に人々の歯並びが急速に悪くなったので、必ず原因があるはずと主張する先生もいます。

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写真のジョン・ヘイズ先生はそのおひとりです。今こそ、不正咬合の原因を探索しようと呼びかけています。

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【著名な矯正歯科医たちのつぶやき】

私は、オープンバイト(開咬)が嫌いです。その原因が分からないからです。どうして、自然治癒しないのかが理解できません。オープンバイトの診断方法を確立することは難しいです。最良の治療法も分からなければ、治療後の状態を維持する方法もわかりません。(Berents AJODO 2015)

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オープンバイト(開咬)の治療後に、再び開かないと保証することに躊躇(ちゅうちょ)します。たとい、患者さんが私の指示を守って、しっかり保定したとしてもです。(Turpin AJODO 2010)

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今日まで、いかにも「科学的」であるかのように、振る舞ってきました。抜歯に代えて、さまざまな非抜歯治療を提供してきました。矯正治療で人が亡くなることは決してないので、科学的でないことは特に問題になりませんでした。しかしながら、その結果として、矯正歯科の専門性が脅かされています。(Johnston AJODO 2015)

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【ビッグデータが原因探索に有効と考えるヘイズ先生】

日本に30校、米国に60校、世界には200校を超える歯科大学があっても、歯並びや噛み合わせが悪くなる原因を探索している研究室はごくわずかです。

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不正咬合の原因がわかったうえで、科学的根拠にもとづいて治療を行えるほうが、望ましいことは分かっています。しかし、原因を探索する研究は時間の無駄、どうせ原因は分からないというのが主流のようです。

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そこには歯科矯正ならではの難しさがあります。治療期間が2〜3年と長い、対象が6〜18歳と年齢層の幅が広い。治療後の安定性を見るならば、さらに10年間のフォローが必要です。

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この子に治療して、あの子には治療しないという比較試験はできません。山に登るのに、どのルートから入っても、目指す頂上は一点です。ルートが険しいか易しいか、時間がかかるのか速いのか、その程度の比較しか許されません。

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しかし光明もあります。近年の AI(人工知能)技術で使われている、ディープラーニングの手法を用いて、これまで蓄積された症例報告を分析し、成功と失敗を見分けます。治療の出発点とゴールを見定め、傾向をつかみます。その中から不正咬合の原因が見えてくるかもしれません。

【バッカル・コリドールのある笑顔】

ニュース番組の女性アナウンサーの笑顔に、違和感をおぼえたので話題にしました。口角の開きに対して歯列が狭いので、両サイドが暗く見えます。これをバッカル・コリドール(頬の内側の回廊)と呼びます。

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コリドール ( corridor ) は廊下や通路という意味です。歯列の周りをめぐる廊下のようなイメージでしょうか? 左右の口角に暗がりがあると、少し病的なものを感じます。欧米ではとても残念な笑顔とみられます。

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アナウンサーとして滑舌に支障がありそうな感じがします。おそらく、上下4本の歯を抜いて矯正したと思うのです。しかし、8歳ぐらいから上顎を広げてあげれば、このような狭いアゴにならなかったし、歯を抜かずとも治療できたかもしれません。

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6〜10歳くらいのお子さんがいらっしゃるご家庭では、舌をお口の天井にぺったり付けられるか、時々チェックしてあげてください。もし難しければ、矯正歯科の先生に早めにご相談ください。

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