イギリスの歯科矯正事情

【第6回】イギリスの歯科矯正事情igirisu152l

イギリスの国民健康保険システム(NHS)は、OECD諸国の中で、ベストの医療システムであるとの評価がなされています。評価は効率性・安全性・有効性・他科との連携性・経済性に及びます。NHSが支払う年間の歯科医療費の総額は36億ポンド(5,400億円:1£を150円として)であり、患者側が負担したのは、そのうち5億5000万ポンド(825億円)です。イギリスのNHS健康保険における官:民の負担割合は85%:15%です。更に、開業歯科医における自費診療収入の総額は22億ポンド(3,300億円)であり、従って、イギリスの年間歯科医療費の総額は58億ポンド(8,700億円)となります。(日本は約4兆円ですから、人口比から考えても日本の総額が大きいと言えます。ただし、自費診療費がどこまで正確かはわかりません。)

gurahu

民間の医療保険について

NHS健康保険のもとで全ての子どもが矯正治療を受けられるわけではありません。 約3分の1の、35%の子どもがNHS保険の適用外との診断を受けています。その場合は民間の医療保険に頼らざるをえません。 会社が従業員のために加入している健康保険もあれば、民間の保険会社があつかう医療保険もあります。そのいずれも、矯正治療を支払い対象に含んでいます。これら民間保険は日本と同様に、NHS健康保険の個人負担分をカバーし、自費診療分を補填する場合があります。

歯科矯正におけるチャリティー活動

英国歯科衛生財団(BDHF)は40年前に設立され、これまでも世界規模で活動してきました。「口腔がん行動月間」や「全国スマイル月間」はよく組織され、メディアをつうじて英国内に紹介されています。最近は歯科矯正の啓発ポスターを作り、地方自治体や学校に配付しています。昨年は850回の口腔衛生に関するイベントを開催しています。その中身は、数百の学校における子どもを対象にした健康スマイル教育と、1,700件におよぶメディア報道、加えて60カ国で5億6000万人に送った口腔ケアに関するメッセージなどです。

医療広告規制について

広告内容が「事実であり、見苦しくなく、誠実であること」以外は、特に制約はありません。しかしながら近年は、審美領域の歯科医療サービスが隆盛をきわめていることから、2012年に公正取引委員会(OFT)が調査に乗り出し、その結果、多くの患者が審美治療を強く勧められている事実が認められました。また、82%の患者が歯科治療計画を書面でもらっていない事実もありました。2013年に健康省は以下の勧告を出しています。

・審美治療における無料相談を禁止。患者が相談後に義務を感じてしまうため。

・医療相談は医療従事者によってのみおこなう。セールスコンサルタントが代行してはならない。

・2者択一・期間限定サービス・当選者のみのような宣伝行為をしてはならない。

以上6回にわたって、イギリスの歯科矯正事情をみてきました。イギリスのNHSを真似て、戦後日本の健康保険制度が作られました。今、アメリカが皆保険制度にむけて四苦八苦しています。国によって一長一短はあるものの、歯科矯正に関しては、日本は大きく遅れていると言わざるをえません。

コメントをどうぞ


友だち追加