日本人と歯ならび

【第82回】日本人と歯ならび

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日本人の歯並びの悪さは先進国最低なの?

 

歯科矯正の普及活動をしていると、「なんで歯並びなの?」と聞かれます。「それは・・・」と説明すれば分かっていただけますが、つくづく日本は世界と違うなと思ってしまいます。今回はNAVER まとめ風に、ネット上で話題になっている「日本人の歯並び」について取り上げてみました。外国人から見て、「日本人の歯並びの悪さは、え〜っ、どうして?」と一様に驚くそうです。「歯並びはマナーのひとつ」と考える外国人には、日本の豊かさや清潔感とのギャップが理解できません。

日本に住む外国人100人に聞きました。「日本人は歯並びが良い」と答えた人はわずか4人、76人が「日本人の歯並びは悪い」と答えています。

  •  日本の皆さんの健康意識を考えると、歯並びが悪いことにビックリです。TVに出ているタレントさんの中にも、ひどい歯並びの人が多いですね。(アメリカ・30代男性)
  •  不揃いな歯並びがチャーミングだと考える人もいるようですが、不揃いな歯並びは外見の印象をネガティブにし、手入れがされていなくて不衛生なイメージを与えてしまいます。(スウェーデン・30代男性)

八重歯がカワイイと思うのは日本人だけ?

 

TYB48(付け八重歯48)というネーミングの、アイドルグループがあったことをご存知の方もいらっしゃることでしょう。3年前に世界の注目をあびた日本人の八重歯文化。ことの始まりは AKB48 のメンバーのひとりの八重歯がカワイイと、私も八重歯になりたいとばかりに、都内の某歯科医院に中高生が押し寄せたそうです。そのようなブームが、外国人には全く理解できないらしい。瞬く間に世界の珍ニュースのトップに躍り出ました。不完全なもの、欠点のある状態に美意識を感じるのは、日本人特有の文化なのでしょうか。

大人の女性に残る幼稚さ、子供っぽさに魅力を感じる文化は、あまり健全とは思えないのですが、それでも、世界を席巻する日本のサブカルチャー「カワイイ」と根は同じなのかもしれません。当然のことながらブームは去り、付け八重歯をはずして欲しいと、再び来院するティーンが多かったそうですし、TYB48 の世界デビューもお流れになったみたいで、良かったです。

骨付き肉をしゃぶらないから、歯並びが悪いって?

 

外国人から見た日本人の歯並びについて、今回はお隣、中国の人民ネットから。経済がこんなにも発展し、生活も豊かなのに、日本人の歯並びが不揃いなのはどうして? 原因を4つ、あげています。

  •  1つ目は、八重歯にたいするカルチャーギャップ。多くの日本人は、若い頃の八重歯を可愛いと感じている。親は子供に矯正させたほうが良いと思っていても、子供が望まないならば強制しない。

  •  2つ目は、食べ物の影響。現代人は固いものを食べなくなり、顎が小さくなってきた。それでも歯の大きさと本数は変わらないので、顎骨に収まりきれなくなってしまった。

  •  3つ目は、歯列矯正の治療費が非常に高い。日本人の歯は矯正するのが難しい。大多数の日本人の上顎骨は小さく、下顎の平面角が大きいから。

  •  4つ目に、中国人は日常的に骨付き肉をしゃぶるのに対し、日本人はそのような食習慣が無いという。子供が骨をしゃぶるとき、歯茎に強い圧力がかかる。これが歯と顎を鍛え、歯並びを良くすると言うのだが。

八重歯が特徴的な、日本人の歯ならび

 

外国人は八重歯に良い印象をもっていませんが、「ドラキュラを連想させる」というのは後付けの理由で、実際は、欧米人が滅多に見ることのない八重歯に強い違和感を抱くのだそうです。原因は良くわからないが、八重歯はアジアの中でも、特に日本人に多いといいます。

ドイツでは、上顎の前歯が内側に入り込み、上下の噛み合わせが深い「過蓋咬合:かがいこうごう」のケースが多いと言います。結果的に、下顎を奥に押し込むため顎関節症の原因となります。見た目には良くても、機能的問題を抱えているケースが多いそうです。ドイツでは八重歯の症例は僅か 0.2% とのことで、あまり治療経験が無いため、当然のように上下4本の小臼歯を抜くそうです。

その点、日本では八重歯のケースが多いので、小臼歯を抜かない治療法のニーズが高いのでしょう。健康な歯を抜くことへの抵抗感や、抜歯にともなう矯正トラブルが増えていること、また治療技術や機器の進歩により、日本では非抜歯治療が普及していると言います。この記事はニュースダイジェスト・ドイツの宮川先生のコラムを参照しています。

外国人からみても、もったいない日本の女性とは

 

日本人の女性は、とても美に関心が強いことで知られています。美白の化粧品やアンチエイジングの化粧品がずらりと売られ、書店には美に関する専門雑誌がターゲット別に何冊も売られています。しかし海外の人にしてみると、「日本人はなぜ歯並びに気を使わないのだろう?」と思うそうです。

「これは、私もいつも気になっているのです。気になって気になってしかたがないと言ってもいいくらいです。ぐちゃぐちゃの歯並びや、八重歯がにょっきり出たままの人が多いですよね。なぜ治さないのだろう、と思うのですが、本人は案外気に入っている場合も多いようです。どうも揃っていない歯並びは可愛いと、思う向きがあるようなのです」

「もったいないなぁと思ってしまいます。歯並びは七難隠す、と私は思っているのです。歯並びを治したらとっても可愛いのに、きれいになるのに、と思えるひとが、とても多いです。最近30代を過ぎてから歯列矯正をする友人が多く、私はとても良い傾向だと思っています。その間はちょっと大変だけど、歯列矯正が終わったあと友人達に会うと、とても美しくなっているのですから。日本の欧米化はまだまだだなぁと、歯並びで感じる私です。美しい歯並びの女性が街を行き交うようになると、素敵でしょうねぇ」(審美歯科ガイド .com からの参照記事です)

日本人の歯並びが悪いのは、歴史の産物?

 

外国人から見た日本人の歯並びについて、エリオットさんはこう考えています。日本人は歴史上、きれいに並んだ白い歯に、関心を寄せることは無かったと。もともと、お口の中はみっともないもので、隠すべきものと考えられてきました。日本の女性が笑うときに、お口に手をかざすのは、そのような理由からです。

ついぞ、歯の美しさに関心が持たれることは無かった。歯は醜いものと思われ、意図的に隠したので、醜い歯はいつしか当たり前のこととなってしまった、と言うのです。それは、明治時代まで続いた日本のお歯黒文化に見ることができます。歯を目立たなくして顔つきを柔和に見せるほかに、虫歯・口臭・歯周病を予防する効果がありました。

保険で歯並びを治せないのが、最大のネック!!

 

来日20年になるスーザンさんの投稿から。「確かに他の人が言うように、アメリカに比べて日本では歯並びの悪い人が多いように思うわ。それはきっと、ブレース(矯正装置)に保険が使えないからね。そのために、治療費がとても高額になっているからだと思うわ」

「私の娘が矯正に興味を持ったのは、前歯が1本だけ、少しはみ出ていたからなの。でも、その治療に100万円かかると言われて。私は娘にもう少し大きくなってから治そうねって、説得したのよ。日本の歯科治療については、予防的な処置が欠落していることにショックを受けたわ。子供の治療に何度通院したか数え切れない。治療したところが、割れたり落ちたりすんですもの」

(解説)被せ物や、ブリッジ・入れ歯などの補綴処置は、日本の歯科医療費の約半分を占めています。しかし諸外国では、歯の機能の補完および再建が目的であるとして、公的保険から除外もしくは限定適用です。他方、小児の虫歯予防(定期検診やスケーリングなど)と社会的弱者への治療提供には公費が使われています。公的助成は当然ながら、予防的処置のひとつとして矯正治療も含んでいます。

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