ある歯科医の体験から

【第120回ブログ】は、ある歯科医の体験談をご紹介します。4歳の息子さんの異状に気が付いたのが決意の始まりでした。

【ある先生の体験から・・その1】

私の子供は4歳の男の子です。いつも夜中に私のベッドに潜り込んできます。いつしか息子がイビキをかいていることに気が付きました。口を開けて、首を思いっきり伸ばし、頭をボードに向けています。

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イビキが止まり、息子が息をしていないことに気がつきました。何秒たったでしょうか。私には永遠の時間に思われました。

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ウッと鼻を鳴らして、腕と足を伸ばし、寝返りを打ちました。そして再びイビキをかき始めました。私は何とかしてあげなければという思いで一杯でした。

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この体験談は歯科医のサミュエル・ジンク先生が、呼吸歯科 ( Airway Dentistry ) への道に進むキッカケとなった手記をもとにしています。

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【ある歯科医の体験から・・その2】

私の息子は不眠症だったと思います。寝汗をかいたり、夜恐がって起き出したり、オネショや歯ぎしりも気になりました。朝起きるのが辛そうで、いつも不機嫌でした。日中はときどき感情を抑えることができず、暴れ出します。

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年の割に小さく、細長くて狭い顔立ちでした。小児歯科医に相談したところ、出っ歯ぎみ(クラス2)と言われましたが、治療が必要とは言われませんでした。

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私はその頃に、小児の呼吸障害を扱った、睡眠歯科の論文をみる機会がありました。それを見て、私はハッと思ったのです。チェックリスト・写真・図表すべてが、私の息子に当てはまる、アデノイド顔貌であることに気がついたのです。

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写真はアデノイド顔貌の例であり、ジンク先生の息子さんではありません。

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【ある歯科医の手記から・・その3】

4歳の息子の顔は、他の兄弟に比べて、細長く狭い感じがしました。乳歯間にスキマはありません。睡眠時に呼吸が止まる息子をみて、脳細胞にダメージを与えないか、成長ホルモンが不足するのではないかと恐れたのです。

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まず小児科医に相談しました。問診票のスコアは80%だったので、小児専門の耳鼻咽喉科を紹介していただきました。その結果、アデノイドが鼻腔気道の60%を塞いでいることがわかりました。(X線写真はジンク先生の息子さんではありません)

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手術によって腫れていたアデノイドを取り除きました。その後、2〜3週間は改善がみられたものの、再び、睡眠時の口呼吸とイビキ、そして頻繁な寝返りを繰り返すようになりました。

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手術後の睡眠状態をビデオ観察したところ、1時間に10回覚醒し、10秒以上の呼吸停止は1時間に1回でした。私たちには、これ以上為すすべがありませんでした。

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【ある歯科医の回想より・・その4】

その頃に出会ったのが ロサンジェルスのハン先生でした。先生は手術によらず、上顎と下顎を前方に動かすことにより、気道をひろげるオーソトロピクスの提唱者でした。

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オーソトロピクスは取り外しのできる装置を用いて、舌・唇・頬などのお口まわりの筋肉と姿勢をただし、自然と歯列を前方に導いて、アゴの成長を助けるものです。

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5〜6歳から始め、結果的に歯を抜かずとも、歯が並ぶアゴが作られるというものです。

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ハン先生の Airway-kening という、気道をひろげる一貫した考えは、抜歯矯正で無くした小臼歯のスペースをつくり、そこにインプラントを埋めて、小臼歯を再建するというものです。

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そうまでして、アゴを大きくしないと、睡眠時の呼吸障害を克服できない大人の患者さんがいるためです。

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ハン先生は、歯科が医療の中心になりうると考えています。歯科医の私もショックを受けました。アゴを育てて気道を確保し、呼吸障害を起こさせないことが、全ての慢性疾患の予防につながると確信しているからです。

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【ある歯科医の決意から・・その5】

私は一般歯科医だったので、小児歯科や矯正歯科の知識と経験がありませんでした。しかし、息子を救うため、息子の将来のために、もっと勉強しようと心に決めたのです。

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オーソトロピクスで治療できる歯科医は近くにいませんでした。そこで私は、ハン先生が主宰する勉強会に参加したのです。2017年から 18年にかけてのことでした。

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ハン先生は繰り返し「気道は近遠心(前後)の問題と考えなければ解決できない」と言っていました。その言葉を理解することができたのは、10代の睡眠時無呼吸症の患者さんの症例を見たときです。

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筋機能療法 MFT を受け、舌小帯を切除し、上顎の水平拡大をはかって、臼歯間距離が46ミリになったにもかかわらず、治療前後のプロファイル(横顔のX線写真)と気道には何の変化もありませんでした。

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何が悪かったのか? 上顎を前方に移動しないかぎり、気道は広がらないという事実です。舌を乗せている下顎も同様に、前方に動かさないと気道は広がりません。多くの水平拡大装置は、アゴを前に動かす効果をほとんど期待できません。

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写真は、4週間後の私の息子です。アゴの成長方向が下向きから前方に変わったことが分かると思います。6ヶ月後には、前歯を7ミリ前に出し、口蓋を10ミリ拡大できました。いまでは充分に呼吸して、よく眠れていることを報告できて嬉しいです。

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