タヒチの歯科矯正事情
タヒチ島は南太平洋に浮かぶ、フランス領ポリネシアのリゾート地です。人口は25万人ほどで、ポリネシア人が8割、華人が1割、フランス人が1割ほどです。通貨はフレンチ・パシフィック・フランと言われ、 CFPまたはXPFで表わします。フランス領ですがユーロ€を使いません。119.33XPF=1ユーロの固定為替レートとなっています。従って、日本円では1XPF=1.05円ほどですが、銀行での両替では手数料が高いので1XPF=1.15円ほどになってしまいます。ここでは、1XPF=1.05円として計算します。
タヒチの平均的な世帯年収は490万XPF(515万円)ですから、日本とほぼ同じくらいです。人口10万人あたりの歯科医師数は30人、矯正歯科医は4人です。歯科医師数は日本の70人にくらべ半分以下ですが、矯正歯科医は日本の3人より多いです。タヒチの矯正歯科医の総数は電話帳によれば8名とのことです。
18歳成人までに70%の子供が矯正治療を受けます。驚くべき普及率ですが、観光立国としては納得できます。患者さんの割合は90%が18歳未満の子供で、残り10%が大人です。子供の治療の場合、80%が生え替わり時期の6歳から12歳の間に治療を開始します。アンケートに応えてくれた先生は、抜歯症例は1%未満と言っています。先生はペドロ・ブラナス氏による「ニューロ咬合リハビリテーション」という術式を用いています。
矯正治療の初回相談は2,000XPF(2,100円)、レントゲンを撮り、歯列形態を調べたり、治療方針を決める「チェックアップ」は19,500XPF(20,000円)です。実際に矯正器具を装着し、器具の調子を整えたり、チェックする処置は6ヶ月で96,000XPF(10万円)です。通常2年を要しますから、治療費は40万円ほどです。このレベルは、本国フランスとほぼ同額で、日本の平均治療費85万円の約半額です。
16歳以下を対象に、国が治療費の一部を補助します。初診時のカルテ作成に6,580XPF(7,000円)をCPS(フランス領ポリネシアを管轄する国の社会保険機関)が負担します。更に治療が開始されれば、CPSは6ヶ月で29,610XPF(31,000円)を補助します。従って、2年間で124,000円の補助金額となります。これにより、実質的な治療費は30万円ほどになります。しかし、16歳を過ぎればCPSによる医療費の補助は適用されません。だから、何としても16歳までに矯正治療を済ませようと、インセンティブが働く結果として、受診率70%という驚異的な数字が生まれるのでしょう。
民間保険会社の「健康保険料」は、子供2人の標準世帯につき、月額14,000XPF(15,000円)ほどです。契約後すぐに矯正治療費をカバーする保険と、契約半年後からカバーする保険があるそうです。保険会社によって条件は異なりますが、矯正治療費の全額を補助するそうです。また、所得の低い世帯への公的助成がありますが、世帯収入に応じてケースバイケースだそうです。日本の世帯平均で月額5万円の保険料を負担しているのに対して、15,000円は安いと思いますが、フランス政府の慰謝料的な配慮が見られます。
規制面についてお伺いしました。一般歯科医が矯正治療をすることに問題はありません。しかし、一般歯科医が矯正歯科の看板を表示することはできません。医院広告については厳格に規制されていて、新聞・TV・ネット・看板などで医院を宣伝することはできません。この点は本国フランスと同じですね。このインタビュー調査には、タヒチで最も大きな矯正歯科医院のドクターにご協力をいただきました。有り難うございます。